視聴継続中の龍馬伝と鋼FAに関する覚書

1.龍馬伝、福山龍馬に(わたしが)陥落日記
ええとファンの皆様には申し訳ないのですが、わたしはどちらかというと福山雅治という人が好きではなく「いい年こいてかっこつけてんじゃねーよ!ケッ!」くらいにしか思っていなかったので、今回の主演に関しても懐疑的だったわけです。むしろ脇役メインで見ていたのですが、前回の「土佐沸騰」を見て、これは正直考えを改めなければいけないなと思いました。
うん、えがった。
「土佐沸騰」は主人公の仲間と敵方がのっぴきならない対立を起こして一触即発、そこへ主人公が捨て身の覚悟で乗りこんでいくという大河ドラマ的お約束の回でした。今回の敵方ラスボスは吉田東洋田中泯で、そりゃあもう存在感は半端ないわけなのですが、向き合ったときの龍馬が非常に良かった。彼の喋り方には独特の癖があるのですが、その癖を封じてきちんと腹から声が出ていた。そうなると、さすがに歌手だけあって声は通るし綺麗だし、所作も美しいし、何よりも真正面から敵方を見つめた目がまったく泳いでおらず、ちゃんと田中泯と渡りあえていたのですよ。…これはすごい、と思いました。去年の主人公が、もちろん下手な俳優じゃないのだけれどどうしても線が細くて声が浅く、こういったシーンでの腹の据わり具合が良くなかったのと対比するまでもなく(してるじゃねえか)。つまりはこの人の話を聞いてやろう、と思う吉田東洋らの変化に違和感がなかったのですよ。この説得力は貴重だなと思いました。時代劇俳優の三大要素である「声」「立ち姿」「殺陣」の前2つは申し分ないし。殺陣は斬り合いがないから何とも言えないけれど、道場での立ち合いなんかは今のところよくやっていると思う。そりゃ内野聖陽みたいに、舞台で武士の役をやることが多く基礎のかっちりした人と比べると落ちるかもしれないけど。
あと得難いと思うのは「受ける」芝居がちゃんとできていること。今回特に顕著だったのは武市半平太との会話のシーンで、武市さんが身を乗り出して喋っているのを自分のフィールドで聞いたうえで返せている。自分が身を乗り出してボールを投げるのがそんなに上手でないことを考えると、これって才能なのかなあと思うのです。
一方で、汎用性の高いタイプではない…というか、これが良かったからって軽率に時代劇に使うと起用した側がしょんぼりな結果を招きかねないので、あくまで脇を固める俳優陣(大森南朋にせよ香川照之にせよ田中泯にせよ)がちゃんとしていて、脚本もまあ甘いところはあるもののきちんと締めるべきは締めているからこそ成立しているから、40なんだけど若い凛々しさがあるという変な人が映えているんだということをわかってもらいたいなあと思うわけです。あと、着物を着て刀を振るうからには、やっぱり筋肉質でも華奢な俳優じゃ駄目で、だからちゃんと芝居のできるがっちり系の若手俳優にも脚光を!と思わざるを得ないのでした。
2.色々と佳境な「鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST」に関する入江監督の記事
原作もアニメも色々と差し迫っていて目が離せない感じです。というか本当にネット万歳!GyaOでバックアップしてくれるから家族がいて観られなくても補完ばっちり☆なので、結局ずっと見続けているわけです。わたしは基本的にアニメを観ない人間で、アニメを観せてくれない&観ていると厭味を言われる感じで育ってきたので「フィギュア観るわ!」とはいえても「アニメ観るわ!」とはなかなか言えないのですよ、ね。しかし鋼FAに関しては全部終わったら原作一気読み&DVDコンプリートしてもいいくらいに考えている。
原作もFAも面白いのは当然なので置いておいて、某所で目にした入江監督のインタビューで「エドとアルの性格の違い」について触れていて、それがわたしが常々思っていた&この兄弟は最終的には(作品内で描かれるにせよ描かれないにせよ)離れていく運命だろうと思っていた根拠と一致していたので、どうもありがとう!な気持ちになったのですよ。
人を集める吸引力があるリーダー気質、一方で感情を抑え込みがちなエドと、集団の中で要となって人をまとめる力を持つアルっていうのが、最初に分離して闘い始めた頃からの鍵だったわけで、それをちゃんとアニメ版の監督が観ていてくれているのが幸せだなーと思ったのでした。兄弟愛もひとつのテーマではあるけど、なにもそれって兄弟べったり永遠に離れられませーんっていうのだけじゃなくて、それぞれ性格も違って行動も違って、たぶん将来選ぶ道も違って、でもかけがえのない家族なんだよっていう方向に鋼FAが進んでくれていることが嬉しいです。弟のことしか大事じゃない兄と兄さんと同じかっこのコスプレする弟とかいうことにならなくて本当に以下略
そして「リーダー気質の一方で感情を抑え込む」タイプといえばロイ・マスタングがそのままあてはまるわけで、じゃあ彼にとってのアルはだれなのかと考えたらヒューズ中佐で、そのことに気付いて愕然としました。じゃあヒューズを殺されたロイの葛藤は、そのままアルを殺されたエドにトレスされてもおかしくないのじゃないか。常々エドマスタングは「こうだったかもしれない存在」同士じゃないかと思っていて、それはラスト戦の後でアルとフュリーが「兄さんと大佐は似てるんだよね」という話をしていたことからも公式だと思っていいと感じているんだけど、まあそういう風に捉えてみると今後のエンヴィー戦が楽しみです。リーダータイプといえばオリヴィエもなのだけれど、彼女は青臭い部分は既に脱していて、しかしそのオリヴィエが部下を亡くした時の決意というのはマスタングや将来のエドがたどり着き越えていかねばならない部分で、その描写にもわくわくしています。
あと5クール目のOP・EDもシドはまあ置いておいて、しょこたんに関しては「エドホーエンハイムの関係」について自身の親子関係も重ねて書きたい、みたいなのを目にしたのでちょっと楽しみになっています。彼女は一番いてほしいときに父親が既に鬼籍の人だったらしいので、そういう人が彼らの関係を読んで感じたことなら(好みか否かはあれど)本物だと思うから。