孤独の肖像

3/19(金)「マクベス」世田谷パブリックシアター
先週うっかり「農業少女」を日程間違いでふいにするという悲劇をやらかしたので、今回ばかりはチケットの日付と時間を何度も確認して向かいました。「あたしなにこんなにチケット…っ!」みたいにパニックだとやらかす。仕方ない。お芝居は心に余裕を持って見ましょう、っていうことなのか。
野村萬斎秋山菜津子マクベス夫妻ということで期待しない方が無理だろう!と思って行ったのですが、想像以上に夫妻中心で話が進んでいました。夫妻以外の登場人物は3人が持ち回りで演じていたせいもあるけれど。そうなるとマクダフあたりの台詞ばっさりカットで、寂しい気がしないでもないが、演出としてはとてもよかったのでしょうがないかな。夫妻以外はあくまで「マクベスたちを追い詰める影」みたいな存在だったのも印象的でした。すごく意地の悪い感じで。
野村さんのマクベスはとても弱い心の持ち主といった感じでした。筋骨隆々ではなく、強靭なんだけどしなやかな肉体と動きのひとつひとつの美しさが際立っていて、こういう「強さと弱さ」の表現もあるんだなあと思った。菜津子さんは野村さんに比べるとナチュラル演技の人で、声の調子なんかも芝居がかったところがあるのだけれど、ふたりが揃ったときの噛みあい方が独特かつ絶妙で、なんかすごいキャスティングだなあと思いながら観ていました。
そしてまあ、夫妻の関係がすーごいラブラブでした。なんかラブラブっていうと語弊があるけれど。ラブラブだからこそ予言を打ち明けて、それを実行に移して、特に夫人のほうは「ふたりなら何も怖くはないわ!」みたいなところがあって、でもその後にはふたりの関係が決定的に違ってしまって最初に夫が逃げ出して…というすれ違いの軌跡がくっきりしていて、せつないマクベスでした。あれだけ夫を叱咤激励していた妻が突然狂気を得てマクベスよりも先に死んでしまう…というのは解釈によって演じられ方が様々だけど、今回の芝居だと「王殺しの辛さがコップから溢れだすように襲いかかってきた」というよりは、夫が一緒に罪を背負ってくれなかったせいなんじゃないかなあと感じた。夫のために手を汚した妻が辛くないわけじゃないのに、夫は自分の罪の意識と権力者としての気持ちに囚われて、罪から逃げることに精いっぱいで、妻と一緒に背負っていこうとはしない。もう会話が成立しない、バンクォーの死の後のシーンを見ながらそう思った。そう思っていたら発狂した妻の容体を訪ねるマクベスの「先生、患者の様子は」が苦しい叫びのような感じで、ああマクベスは自分が妻を追い詰めたことをわかっているんだなと思ったらそこから涙が。マクベスって泣くような話か!と思いながら、ふたりではじめた大きなことが妻と夫をそれぞれひとりぼっちにしてしまった皮肉にやられてしまった。
菜津子おねえさまは相変わらず素敵でした。しかし髪型と衣装がマクベス夫妻はペアルックみたいで、あれってたぶん狙いだよね。身長差もそんなに大きくないし。