上演されなかったあの日のレビュー

おとついのかんげき→「宝塚BOYS」@シアタークリエ
招待券を頂いたので観てきました。若い男性俳優がわいきゃいしてるタイプの芝居ではあるのですが、とてもしっかりした脚本と演出で、とても面白かったです。
女の聖域である宝塚に実在した男子部。そこに集った7人の青年の9年間の栄光なき挫折の物語。もちろん現在も宝塚に男子部はなく、身も蓋もないことを言えば彼らの9年間は日の目をみることがない飼い殺しの日々なのですが、それを必要以上に暗いものにせず、さわやかな青春物語でした。
夢が叶いかけては潰え、戦争で生き残ったことを皆どこかで後ろめたいことのように抱えていて、それでも「ここでがんばった日々は自分にとって大切なものだ」と言い切れるほどに切実にがんばり続けたこと。夢に向かって努力したことの意味を、夢がかなわないという結末でここまで描き切る脚本は、シンプルなようでいてとても練られていると感じました。現代でも夢の舞台を目指して挫折していく人は山ほどいるけれど、みんなにある種の救いが残るような舞台だった気がします。わたしは母と行ったのですが、ちょうど現地で売れない役者の後輩に会い、彼はどんなふうに彼らの結末を捉えたのかなと気になりました。まあ、彼らには「駄目でもがんばる」のではなく「絶対にやり遂げる」という決意を固めてほしいものだなと思いましたが。
そして「生き残ってしまった以上、死んだ戦友に胸を張って報告できるよう頑張らなければ」という思い。M.O.Pもそういうエピソードが出てきたし、ちょうど「父と暮らせば」を読み返していたので、個人的にこのテーマ続くなあと。でも、死んだ人が何も語らない以上、前を向いて生きていくひとの出した答えってここに帰結するのかもしれないなと改めて思った夏の日々でした。
7人のうち4人は東宝舞台系、2人は映像系、ひとりは…小劇場系なのかな?やはり普通に立っていると映像系の人たちはスタイルがちょっと抜けていいのですが、レビューにひとたび入ると身体の見せ方をぐっと知っているのは東宝舞台系の4人で、王子オーラが出てくるのには感激しました。ダンサー役の東山さん、彼のアルンジョラス@レミゼは物凄く!物凄くかっこよかったのでまたやってほしいのですが、ご本人も自分のカンパニーを持っているだけあってダンス能力が高く、タンゴのシーンは垂涎ものでした。個人的にはもっと粘らない系のダンスのほうが好きなのですが、あそこまで上手いと好み云々の前にとにかく凄いよね。石井一彰さんは見た目も王子だし歌も所作も綺麗だし、遠くないうちにマリウスだのルドルフだのをやるような気がします。