そして今年もわたしは彼らにきゅっとなるのです

わたしは「演じている人」を観ているのが好きで、フィギュアスケートもビッグジャンプが好きとかスポーツが好きとかいうよりも、何よりも彼ら彼女らが「演じる」という不可解で不安定なものに全力を傾けて向き合わざるを得ない凛々しさが好きだからという不純な動機で見ているのです。
そんなわたしが毎年本当に楽しみにしているのが、各方面で非難轟々の「日本アカデミー賞」です。文句あっか。
賞レースとしては「日本アカデミー賞じゃなくて日テレアカデミー賞だろ」「どうせ日テレ系が強いくせに」「キネ旬に比べれば偏り過ぎていて」と色々なことを言われています。それは知っています。わたしだってそういう観点からみればイマイチすぎる映画賞だと言わざるを得ない。しかし、そういうことはぶっちゃけどうでもよい。やっぱり俳優さんや女優さんって自分を売って口に糊している人で、そういう人たちってものすごく格好良くて、格好良い人たちがとても美しいお召し物を着て一同にずらりと並ぶあの壮観な眺めに「ほわー」とため息をついて興奮したいから日アカ授賞式になくなられては困る。本当に困る。
なお、今年の主な受賞者は以下の通り。

作品賞 沈まぬ太陽
監督賞 剱岳 点の記
脚本賞 ディア・ドクター
主演男優賞 渡辺謙(「沈まぬ太陽」)
主演女優賞 松たか子(「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜」)
助演男優賞 香川照之(「剱岳 点の記」)
助演女優賞 余貴美子(「ディア・ドクター」)

以下、印象などを箇条書き。
中谷美紀は何がどうしたんだっていうくらい圧倒的に美しかった。あれはどこから来るんだろう。「嫌われ松子の一生」からこっち、どんどん凄みを増している気がする。
松たか子は舞台で見るとそこだけ光り輝いているようなのに、こういう場で見るとすごく地味。ケイト・ウィンスレット的。「あそこの奥さん綺麗よねー」と言われる上限というか。しかしドレスもメイクも「パーティーに呼ばれた奥さん」みたいな感じだったのはいかなるものか。あの面子の中の誰よりもお姫様育ちだろうに。
・終始落ち着きのない感じだったヒロスエが妙に心配です。予告編観る限りでは「ヴィヨンの妻」の愛人役のほうがいい仕事してそうだった。彼女最近、演技に対していい意味で欲が出てきている気がするので、どーしよーもない女の役とかやって一皮むけてほしいものだ。
・あおいがまた痩せたような気がして妙に心配です。キツめのメイクだったせいかもしれないけど。彼女くらい細いと腕は出さない方が安心できるなあ。あおいちゃん元気?ちゃんと食べてる?駄目よーちゃんと食べなきゃ、という気分に。
綾瀬はるかのデコルテ〜二の腕のラインの美しさにくぎ付け。玉のような肌に真珠色のドレスがよく似合う。あの子あんなに美しかったっけ?そんな美しい人がおっぱいおっぱい言い募るのはどうしようもなく萌え。
ペ・ドゥナは普通にしていても人形っぽい。そしてこれだけの面子が揃っても脚の長さがはっきりわかるって、どんだけ脚が長いのよ。ビシっと決めた女優さんたちの中でおかっぱがちょっとルーズなところも「共演したい俳優さんは?」と聞かれて「香川照之さん」とめちゃくちゃはにかみながら答える姿もきゃわゆし。香川さんに「一緒に山に登りましょう!」と言われて身をよじらせる姿なんてもう、萌え。
・余さんのお召し物がこの上なくクールだった。あのお年でスキニーパンツがあんなに似合うとときめいてしまう。パンクな装いで、袖口の豹柄も素敵。自分で自分の名前を読んでスピーチって可愛いし。これからも素敵な嘘をついてください。「ディア・ドクター」の看護師もよかったけど、「外事警察」の官房長官役は新境地だったと思う。
・男性のベストドレッサー瑛太一転押しで。ミッドナイトブルーのスーツで襟だけ黒とか、それに黒のシャツ合わせて滅茶苦茶似合ってるとか、レベル高い。
・レベル高いと言えば浅野忠信もスーツはストライプ、シャツもストライプ、ネクタイとポケットチーフはチェックで正直地デジに感謝!な感じの着こなしだった。よくあんなもの着こなすなー。やっぱり圧倒的に格好良いのだよね、こういった人々は。
・そんな中で父に「橋本府知事」と揶揄される大森南朋
・思うに現在の若手俳優の中で一番美しい顔をしているのは玉山鉄二なんじゃないかと。もっと出演作に恵まれてほしいものだ。
・だんだん堺雅人がこういう場所に馴染んできた。初期の「俺『東京オレンジ』っていう早稲田劇研の劇団出身なんだけどいいんだろうか」という雰囲気がなくなってきて寂しいけど、これはこれで素敵。
・新人賞の水嶋ヒロのスピーチが意外と良かった。ていうかこの人、ずっとピンとこないなーと思っていたけれど、体つきも良いし声も良いし、喋っている内容を聞くとかなりクレバーな人みたいだし、制作サイドにも興味があるようで野心家っぽいし、正直「ドロップ」でこんな場所に呼ばれてる場合じゃないんじゃないか。えらいさんが一堂に会する機会でもあるので、自分を売り込んで硬派な作品に出てもらえれば。その中途半端な髪型もどうにかして。ぶっちゃけアルフォート・ミニとか絢香の旦那とか言ってる場合じゃないような気がした。
・百恵の旦那と言われ続けたらしい三浦友和先生ですが、今回のノミニーの素敵オジサマ枠は彼一点だったような気がする。いや謙さんは素敵だけど謙さんだし。鶴瓶師匠は師匠だし。三浦さんは日本一セクシーな狸オヤジでいいような気がする。かっこいいわあ。
鶴瓶師匠と司会陣のショートコントに、申し訳なさそうにすることで最大の効果を発揮するケン・ワタナビはやはり素晴らしい俳優なのだと思う。なんて可愛く映り込むのだろう。あれは絶対に狙ってやっている。
森繁久弥先生にお尻を触られるのはいいけど、木村大作に触られるのはちょっと嫌だと思った。なんていうのか扱いづらそうなじいさんだった。
・キムタエが主演女優賞発表の時に「どの映画も観させていただきましたが…」と言っていたのだが、キムタエが「おっぱいバレー」を観ている姿を想像するとちょっと、なんともいえない気持ちになる。観たんだ…そうか、あのキムタエがおっぱいバレー観たんだ…ざわ…みたいな。
西川美和監督は相変わらず色っぽかったです。あの人見るとちょっと幸せになる。
香川照之を受賞させるなら「ゆれる」を越えたときだろうと思っていたのだけれど今回でしたね。「ゆれる」のときは丁度対抗で「武士の一分」の笹野さんが出ていて、どの賞レースも交互に受賞・日アカは勿論笹野さんっていう感じだったのだよなあ。「剱岳」「ディア・ドクター」「沈まぬ太陽」に出演されているという過密スケジュール。これほどの人になると日アカなんてねーと思っていたのですが、スピーチでじんわりと来ているのを見て、こっちも心が潤んだ。
・色々映画賞はあるけれど、日本でスタッフに贈られる映画賞はこれしかないそうなので、録音賞とか編集賞をもらっている人のちょっとこわばった顔を見るのも好きだ。

俳優という仕事はメダルや成績があるわけじゃなくて、褒められる機会が少ないんだろうと思います。だから苦節○年で報われた人の姿を見ると「ああよかったね」という気分になるし、小劇場出身の俳優さんが歌舞伎の家の人とか元アイドルと並んでいるのを見てそれぞれの人生についてうふふと思ったりもします。
残念なのは新人賞を受賞した子たちが、漫画原作(すべての漫画原作を否定するわけじゃないけど)やケータイ小説の映画化への出演で賞をもらっていることで、こういう映画と「ディア・ドクター」や「沈まぬ太陽」との間の断絶感をどうにかしていくことが課題なんじゃないかと思います。花嫁の余命が1カ月切ってる場合じゃない。あと、こういう映画賞は皆で観に行って面白い映画が獲るべきで(フラガールとかAlwaysとか)、そういうのがあってこそわたしは「ディア・ドクター」や「空気人形」を絶賛できるので、もっと頑張ってほしいよねと。
なんだかんだ言っても、今年もまた美しい人たちに「はー」と感激できて満足でした。賞としての側面をわたしに問いかけられても困るので、このへんで。