なにわバタフライ

2/12のソワレに行ってきました。実は私、直前まで来週の金曜に観に行くと思っていたからチケット確認して大慌て。私が日付を確認し忘れてうっかり忘れた芝居が「オケピ!」の2003年バージョンだったりするものだから、これで下手こいていたら三谷幸喜運の悪さを嘆くところだった。
戸田恵子は凄い人でした。いや当然なんだけど。シアタートラムは何度か行ったことあるけど、そこで観たどの役者と比べても段違いに声が通っていた。今まであの劇場は声や音がひどく拡散すると思っていたんだけど、彼女はその小屋の印象を越えていた。ものすごい声量と包容力。「ひとり芝居」って2時間・360度自分とお客さんとの勝負というか対話じゃないですか。その対話力が半端ない。あとは切り替えの巧さ。ぐっと引きこんで泣かせるシーンからふわっと解放されて「女優・戸田恵子」として客席に語りかける場面での緩急が神がかり的でした。声量もだけど声の芝居もうまいし。少女から晩年まで声から動きから全部違う。
全編通して見ごたえのある舞台だったけど、中でも師匠との別れ〜ぼくちゃんとの死別に至ってはどこを切り取っても鳥肌ものだったと思う。師匠と別れてヒロポンに溺れるシーンの語りは怖くて仕方なかったし、夜汽車の中でぼくちゃんの心変わりを責めるシーンの思い詰めた顔はせつなくて綺麗だった。病室のぼくちゃんとの会話は、もう会えなくなる悲しみがあるからこそ笑ってほしいという女心のいじらしさが溢れていて号泣してしまった。
しかし言葉にすると陳腐になってしまうけれど、空気として引きこんで涙の湖に落とし込むみたいな手法が本当に三谷さんはうまいなあ。芝居としての緩急がうまい彼に、演技としての緩急の神である戸田恵子が絡むっていうのは贅沢な布陣だなあと改めて思った。
そういえば戸田さんが「日本には昔から落語という素晴らしいひとり芝居があって…」という語りをしていたけれど、落語っぽい切り替えをするシーンがいくつかあったな。背筋が伸びていて着物の着こなしがきれいで滑舌がよくて切り替えがうまい彼女が落語家役やったら、ちょっと面白いかもしれない。
とにかく、寂しさと切なさと楽しさとときめきと笑いが溢れた絶品舞台でした。あー面白かった。