グランプリファイナルを総括してみるのだ〜男子シングル編〜

本当は早く全日本前のことを書きたいのですが、これ書かないと終わらないじゃんってことで簡単に。男子です。

男子SP

・ベルネルの4-3に思わず声をあげてしまった後のシングルジャンプに、声をあげたことを非常に申し訳なく思いました。ごめん期待して。なんだろうなあ。インフルエンザにも罹っていたと聞いたのですが、今季の彼は大丈夫なのか。ずいぶん痩せた気がするし。ただ、これがライサチェクみたいな安定感ある人ならまだしも、ベルネルだとどこまで心配すればいいのやら。

・会場をピンクに染め上げるスタンド使い・ジョニーのパワーは今日も健在。この突き抜けた男らしさと凛々しさはもっと評価されていい。が、ジャッジの間では喧々諤々じゃないのか。まあ、点が出てるからいいか。隣の席のおばさま2人組は「ジョニーって本当に綺麗ね」「少女漫画の登場人物みたい」と言っていたけれど、少女漫画だとしてもヒロインの恋人になるタイプじゃないよな。そう思って色々考えていたら「天然素材でいこう!」のなるさんってジョニーっぽいのかと思った。いや、なるさんは結構イイ性格した怖い人だからジョニーとは違う。しかしまあ、この人のシルエットは綺麗だよね。華奢でお尻の形が綺麗。実際近づいてみるとそんなに華奢ではないんだけど、印象としてそういう中性的な感じはそりゃ人気高いだろうってことで。

・ジョニーを越える狂乱に会場を染めたのは高橋大輔でした。私は特に彼のファンではないのですが、というか「高橋を好きになったら負けだと思ってる」という働かないニートのような言い訳で彼の魅力から距離を置いて分析しよう分析しようと努めているのですが、その私の努力を無に帰すあのタンゴ。すげえ…。心拍数がぐおーんと上昇したね。ひたすらかっこよい。ああもう畜生あんたは魅力的だよ、と言いたくなる。そして彼、前々から思ってたけど基本的にきゃーきゃー言われるの好きだよね。「さあ来い!」と言わんばかりのアピール。そういうところが他の日本男子になくて彼にある部分だと思う。

・高橋君のせいでボルテージあがりまくった中で登場したアボットは自分のペースが掴めないまま3分弱が終わってしまったように感じた。あそこでざわざわしていたのは私の心だけなのか、あるいは会場全体がざわざわし続けていたのか。正直よくわからないけれど、やりづらい空気だったのは確かだ。こういう人の後にああいうプログラムを滑って惹きつけるって難しいけどやりがいのあるチャレンジだと思うよ、とジェレアボにつぶやきたい気分だ。

・そういう意味では自分のペースを絶対崩さない・崩させないライサの底力の強さも思い知らされた。黒くて長くてちょっと面白かったけど。良いプログラムだなあ「火の鳥」。でも、やっぱり衣装が振付やテーマをサポートしないのは私あまり好かない。だって赤が少しでも入っていれば、せめてシャツがはためけば「おかあさん、あのひと鳥みたい!」って気分に皆がなれると思うのよね。

・ざっくざくといろんな猛者が歩いて行った道を行くには織田君はまだ線が細いのだと思いました。でも彼にとって「死の舞踏」は絶対に守りに入りようがないので、彼が一番頑張らないと迸らないものがこのプログラムに入っているので、いいセレクトだなと改めて感じる。彼の場合は「僕はこれが得意」「けっこういいかも」と思った瞬間甘えたり守りに入ってしまう部分があるので、片方のプログラムがそれを起こしようがないっていうのは良い。あとは基本的な部分で技術がもっと向上すれば…。しかしSlStで「ああがんばれ!」と思った瞬間ふとリンクサイドを見たらモロゾフが「ああがんばれ!」って感じでフェンスにへばりついていて、みなけりゃよかったと思ったのでした。

男子FS

・どうにかクワドを決めたベルネルに「やった!」と思ったら後半があんな感じで「ベルネル…」となってしまったのでした。あの人どうすればいいんだろう。これをこうした方が素敵なのに、と思う気力すら起こらない。とりあえず最後まできちんと滑りきってくれたら素敵なのに(←それが難しいからあんなことに)

アボットのオルガンは本日のハイライトだったんだよ、私的に。クワドこけたあ?そんなの関係ねえ!素晴らしい音楽表現、端正な足元、ザッツ・フィギュアスケーティング北米スタイル。アメリカの両雄ライサとジョニーがふたりとも「ザ・北米」ってのとは少々外れているので、バトル亡き今(死んでない)北米スタイルを背負ってたつべきなのはジェレアボだと思うんだけどそこんとこ皆様オーケイ?パトリックはまだ若造だし、彼はもう少し個性的なにおいがするので保留ね。

・こちらもこちらでジョニーワールド全開のウィアーさんなのですが、なんというか印象が薄いのはなぜ。観てる時はうっとりしてたはずなのに。彼はこの方向でブラッシュアップしていくのだろうか。個人的にはもう少しパンチが欲しい気がする。

・こういうときについ欲が出てしまって全体の演技が縮こまるのが織田君の弱さという気がする。こういうシーンを見るにつけ、彼ってあまり感情表現が得意じゃないんだろうなと感じるのは私だけでしょうか。あの号泣が印象的なので感情を表に出すタイプと思われがちだけど、うまくいかないとすぐ表情が凍る、緊張すると笑顔が硬くなる。東京ワールドの前後に明らかに高橋君と差が開いて悔しそうなのにそれを隠してへらへらと笑ってるのを見ていて、あープライド高いんだなこの子と思ったときからその根本はあまり変わっておらず。そういうプライドが高いところを認めた上で演技として昇華すれば表現の景色が変わると思って「死の舞踏」なんだろうけど、そこで捕まえたものはきちんとチャップリンにも還元せにゃいかんね。とりあえず「コミカルな演技なら僕得意だから」と思うのやめてみようか。うん。

・ライサの衣装の蛇はなんでしょう。シェヘラって蛇出てきたっけ。まあ、そんな話はさておき、だんだん面白いプロになってきたよ。シェヘラザード。ただ今の感じだとライサの持ち味のシャキシャキした動きがシェヘラのうねるような曲調と微妙にマッチしないのだが。そこんとこローリー手直し頼んだよ。しかし2008年時点では「トスカに戻した方がいいんじゃないか」と言われ続けたラプソディー・イン・ブルーがあれだけの完成度と大団円感を持って今も愛されていることを思うと、シェヘラザードの成長はちょっと楽しみなんだよな。

モロゾフが高橋君の今回のFSに「何がしたいんだ陣営は」的なことを漏らしたそうですが、その言葉にはこの場で全面的に同意を表明します。彼自身も演技を見返して「俺は何がしたいんだ」と思っているんと思うからです。クワドの失敗なんてどーでもいいんです。跳びたければ跳べばいいんです。成功させるためには絶対にチャレンジが必要だと思うし、これで枠数が2で全日本で小塚とガチでやりあわなきゃいけんというのなら蛮勇ですが、そうじゃないし。普通に実力発揮すれば高橋君は五輪代表になれるし。そうじゃなくてその後だよ。クワド成功できない可能性が高いなら、それを見越して「集中を切らない」練習が必要だったんじゃないかってことだ。怪我明けなのは大変だと思うけど、今までの試合展開観てるともうそういう問題じゃないじゃん。現実的に五輪メダル狙える選手じゃん。すっごい努力してきてさあ!そういう選手が、五輪前の最後の国際試合になる可能性の高いGPFでこういう演技をしたってことが私は結構悔しいんだ。
彼の隣にいるのがモロゾフならキスクラで無言で怒ってるだろうし、たとえばキャロルコーチやら佐藤コーチでも怒ってると思うんだけど、それを一緒に判断して乗り越えていこうとするコーチが傍にいる以上、そういうやり方が俺に相応しいんだという証明を全日本では期待します。ロシア人になんかねえ好きなように言わせておけばいいのよ。だってあの人は結局芸術が正しく芸術していれば幸せなんだから。