NHK杯覚書その2 女子シングル

はい、さくっと女子も書いてしまいます。かなり自爆大会だった女子ですが、それでも色々と課題が見えたり心が見えたり、そういうのも含めて「試合」ってやっぱり素敵だなと思った。稽古でやってきたくらいの実力は出せなくても、やっぱり本番をやってナンボだったように。それが例え悲しい出来栄えだったとしても、見てもらわなきゃ始まらない。試合も芝居も。

サラ・マイヤー(棄権)
サンバ可愛かったですが点が本当に伸びなくて、キスクラで頭抱えてしまって…アシュリーが始まっているのにそっちを見てしまって、前半20秒くらい集中できなかった。ごめんアシュリー。FSはアネッテと一緒にビッグハットの廊下をジョグしていて、取材にも答えてたのですけどね。ああトリプル決まらないなーと思っていたらジャッジのところへ行って何か話していて、結局棄権…。ジュリエット楽しみだったけど、本番はユーロと五輪だし仕方ない。
レオノワもラウラもキーラも素敵な選手で、ベテランのユリアやぽいきおさんの頑張りは嬉しくて、マルケイやジェナの元気いっぱいの演技も楽しみたいけど、やっぱりユーロ勢をこの4年間中心になって引っ張ってきたのはサラとカロリーナだから、彼女たちが元気じゃないと私はとても寂しいです。Juliet, Don't cry 君の色で街中を塗りつぶせ。

ベッキー・ベレスウィル(総合11位)
雰囲気は非常に良いものを持っているけれど。美人だし。でも華やかさやパワーはやっぱりすぐにシニアに出てきた選手のほうが上なんだよなあ。アシュリーやレイチェル、ミライやキャロラインみたいな。この路線の選手は貴重だから、頑張って技術をソリッドにしてほしい。

石川翔子(総合10位)
良い演技だったと思います。細かいところで色々惜しかったけど、翔子ちゃんの良さはすごく出ていた。長身で独特の華やかさがあって、荒川さんの若い頃みたいって思う人が多いのも頷ける。SP・FS・EXともに「私はこうしたい」っていう気持ちがきちんと見えて、ああ健やかだと思いました。伸び伸び成長して欲しい。
それには佐藤先生のところは、当面最高の環境だと思うよ。

■オクサナ・ゴゼワ(総合9位)
スケーターって大抵テレビで見るより細くて頭ちっちゃいんですが、テレビでもそう思う人を現物でみると大丈夫かってくらい細い。そして頭ちっちゃい。ちょっと手足の長さをもてあましているように見えたなあ。まだ海のものとも山のものともつかない感じで。

■アネッテ・ディトルト(総合8位)
開場直後に目撃して声かけたら笑って答えてくれた選手。凄まじく細くて顔ちっちゃくてね。SPは久しぶりにこけないアネッテが見れて幸せでした。本当にユーロの選手はきらきらした音への乗り方が素敵。
フォレスト・ガンプは切なくていいなあ。あのオープニングのきらきらした音で優美に滑る彼女が素敵すぎて泣きそうになったよ。やっぱり少しグダりましたが…あの中盤の激しさをぎゅーんと表現しきってくれると、フォレスト・ガンプの「人生色々あるけどそう捨てたもんじゃないよね」っていうメッセージがアネッテの全身から伝わってくるような素敵プロになると思うんです。期待しています。
そういえばフース先生がステップのときフェンスをばしばし叩いて激励していた。同じことをアダムのときにオーサーがやっていた。ぶっちゃけ傾くモロゾフよりもそのふたりが気になった。

シンシア・ファヌフ(総合6位)
ファヌフのノクターンすごく好きだなあという思いを新たにしました。柔らかくて物憂げな曲に、ファヌフ自身のかっこいい空気がぱしっと芯を通している。一見「この人がノクターン?」って感じなんだけど、はまるんだよなあ。一曲で全部もっていく構成も良い。素敵。これぞベテラン。
FSはTESだけなら2位か。サラの棄権が伝えられて、彼女日本にもファンが多いから「ええーっ」みたいに会場がどよめいた後拍手が起きて、戸惑った空気が残った会場で気合の入った演技をしてくれたんですよね…継続プロだし、本人も納得の出来ではなかったでしょうが、もう少しPCS弾んであげてもよかったんじゃないかなあ…彼女本当に素敵だったんですよ。

■ヤン・リュウ(総合7位)
見果てぬ夢は優美で優しくて良いプログラムでした。アジアンビューティー。FSはどんどんグダグダになっちゃったけどさ。連戦の疲れもあったでしょうが、ヤンリュウらしさは良く出ていたと思います。FS後、なんだかフラワーガールと同じ色の衣装なのでまぎれていて笑ってしまった。

ラウラ・レピスト(総合5位)
SPは難しい曲を完全にモノにしていて、ジャンプの失敗は残念でしたがもっと点が出ても良かったんじゃない?みたいな。いやー、かっこよかった。タンゴもかっこよかったけど…やっぱこのジャンプ構成だと厳しい。でも逆に、年にノーミスなんて何度もできるわけじゃないし、切れない演技を続けていって大事な試合できりっと決めてくれればと思います。しかし随分絞ったね…もうちょっとふっくらしていた方が個人的には好み。

中野友加里(総合4位)
オペラ座さー、あれ後姿から始まるならテレビで放映するときも後姿から映そうよ!確かに顔を覆うゆかりんの表情はかっくいいけど、あの振り向いて仮面をはらりと落とす情感が見れないじゃん!思ったよりもファントム寄りのオペラ座だったけど、私が個人的に今一番ファントムを演じて欲しい人ってサラ・ブライトマンだったりするので、中野版ファントムの可憐な切なさも全然ありです。しかし、クリスティーヌは彼女なりにファントムを愛していたっていうのが伝わってくるプロだねえ、これは。そこに女性振付を感じる。
でもって「火の鳥」の少年性ね。完全な存在に近い火の鳥をめぐる少年の冒険譚(ざっくり)なんだから当然とはいえ、ゆかりんの少年のようなきりっとした一途な雰囲気にはまっていて泣けた。これ完璧にやりきったら本当に泣くわ。そのためには会場全体を巻き込まずにはいられないくらいの盛り上がりが彼女自身に必要だなあって思う。イェテボリくらいの。ああそれが一度でいいから見たい。できれば五輪で。

アシュリー・ワグナー(総合3位)
すべてのプログラムにおいて、彼女の指導をしている人は彼女のことが好きで、彼女と仕事するのが楽しいんだろうなと思いました。クールで重みのあるSP、華やかでゴージャスなFS、等身大の女の子らしさのあるEX。全部アシュリーの中にあるものだけど、全部方向性が違って、それでいて全然無理がない。良い大人に恵まれるって本当に素晴らしいことだなと思いました。
だったん人の踊りは良いプロなんだけど、ああこれじゃ点は出ないなと思って見てしまった…後半のジャンプの降り方がことごとく危ない感じで、もう…でもアシュリー、あなたミスするときって大体こんな感じでやらかしてるよね、去年から。すぱーんと決まったアシュリーをとりあえず全米でプリーズ。そして五輪へ行ってくれ。好きだ!

アリョーナ・レオノワ(総合2位)
私、彼女を観ながら一体何度「可愛い!」と言っただろう。それくらいすべてがとにかく可愛かった。シカゴは良いね。なぜかミスターセロファンでステップっていう不思議な構成もいいね。後半でホットハニーラグとか盛り上がるなって方が無理。そんなアリョーナは国分太一をとりこにする前に刈屋アナをメロメロにしてしまいましたとさ。しょうがないよ可愛いもん。きゅんきゅん。FS1位おめでとう!メダルもおめでとう!

安藤美姫(総合1位)
SPの6分間練習のぼんやりした感じに「…?」と思ったら案の定。笑。でも「言うほど悪くなかった」というのが感想でした。本人の談話を聞いてびっくりしたくらい。だからFSの6分間練習、ぎゅいーんと飛び出していく様を見てだいじょぶかなって思ったんだけど…うーむ。
しかし、女子の6分間練習は美姫ちゃんにキツかったかもしれない。男子は日本選手だけじゃなくて比較的まんべんなくジュベールやジョニーにも声がかかるけれど、女子は7割方美姫ちゃんだったので。フェンスにもたれてみてるだけの私がこんなに緊張するんだから、選手本人の緊張はものすごかったんじゃないかと思う。むしろ「怖い」と思った。相性の悪い試合で、自分はこんなに期待されてる…っていうのは身体をこわばらせる理由として充分だなって。小塚君もねえ、たぶんこんなにキャーキャー言われる立場でのNHK杯は初だろうから緊張したんだと思うんだけどね。明らかに。
そして浮かび上がる疑問「ジャンプか表現か」だけど、この答えって「両方」なんだよね。選手もコーチもファンもわかりきってるように。ただ実践が難しいだけで。「大学受かるためにはどうすればいいですか!」「全教科満点を取ればいいです!」みたいな。両方を求めるから「ジャンプばっかり」じゃ駄目だよねって話になる。ジャンプ自体も芸術だから「美しいジャンプ」には加点がされていく。これはもう仕方ない。回転不足にしたって、そこあまり見ずにいた頃と同じ目でファンが見れなくなっている以上(ああこれDGだとか)もっとルールに詳しくて色んな試合を見ているジャッジの目もどんどん厳しくなっていってるだけのこと。そうなるとどの方面に向けても「自分の完成度を高めていく」しかないんだろうなあ。
本人が言うように「運が良かった」ってことが大いにある2勝だけど、今までこういう地力で勝てる試合で自分の力を発揮できなくて沈むケースが多かったから、ようやく貫禄勝ちというか風格勝ちができる選手になったんだなあとも思う。ていうか、それくらい2年前くらいからやれてて良かった気もするけど。まあそれは、そんな彼女の不器用な生き方が好きだ!ってことで。

ペアとアイスダンスとエキシビはまた書くと思います。