その未来は僕の目の前を走馬灯のように

昨日の観劇「ファンタスマゴリア」少年社中@座・高円寺1
世間のフィギュアスケートファンの皆様がカップ・オブ・チャイナで盛り上がってるさなか、私は芝居を観に行ってきました。なので試合はまだ観れていません。だがしかしロステレコム杯EXは観終わっているので、周回遅れではない。EXは小塚君が「リズム感はあるけれどグルーヴ感はない」状態からだいぶ短期でグルーヴ感が増していて驚いたのと、真央嬢の扇子使いがエリックに比べてもたついていて、あーやっぱり疲れてたんだなと思ったのと、美姫ちゃんはスローパートで「私を見てくれる?」から「私のこと見るでしょ?」にパワーアップしてたのにタップでそれが継続しなくて残念だったのと、プルシェンコにひたすら呆れ返る荒川さんに心の底から頷きまくった感じです。川スミは調子いまいちだった?あの凄すぎて逆に笑える感が減っていた。
閑話休題ファンタスマゴリアを見ながら感じたのは「舞台役者の発声ってフィギュアスケートのスケーティングみたいだ」ってことでした。基礎中の基礎だけど練習しなければ衰えてしまう、それがしっかりしていると役(プログラム)の幅が広がる、緊張するとかたくなって伸びなくなる、伸びない状況で押すと疲弊してさらに表現が縮こまる、子どもっぽい役(プログラム)なら他の部分でカヴァーできるが大人の表現が要求されるほどそこが物を言う…という意味で。っていうのは、主演ふたりをはじめとした男性俳優たちの声に伸びがまったくなくて、その力任せ感は「少年」の夢を演じる分にはとてもよかったんだけど、殆どの役者がアラサーみたいな状況では発声と動きのワンパタさが辛くなってきたと思ったので。
今回は練習期間も1カ月ほどだったらしく、昔の演目の再演とはいっても当時のメンバーなんて演出含めて4、5人だから大変だったのはわかるけど。でも、えりさんと未央さんはとても肩の力がぬけて声がすーっと伸びる芝居をしていたから、俳優たちの「頑張ってます感」にすごく違和感を感じて。それが少なかったのが一番年若いありそさんだって時点で、ちょっともー!っていう。うーん。堀池さんや井俣さんも声は悪くないし華があるんだけどなあ。こんなに残念に思うとは。
話の内容はファンタジーとSFと幽霊譚とミステリーがひとつの箱に入ってごちゃっとしてる…みたいな感じで結構好きだった。でも終盤、ふたりの登場人物が同一人物だと発覚して…っていうのは、ちょっとわかりづらい人もいたんじゃないかと思う。なんせ身長差がありすぎる。洋服のシルエットとアクセサリーと髪型が似ていても、身長が10センチ以上違う女性同士が同じ人でした!って言われても、ちょっと「ええ〜」みたいな。ただ、その仕掛けの微妙感も、えりさんが手紙を読み始めた瞬間に涙腺がぐわっと緩んだからOKのような気がしてしまった。同じ手紙を他の人が読むシーンもあったけど、えりさんの「あなたが危険な奇術に次々と挑戦していくのを見ていられません。あなたをずっと見ていたかったはずなのに」という言葉の真に迫り方がものすごかったので。あの手紙は本当にずるくて弱くてどうしようもない女の性を語っていたのに、それを「甘えたこと」にしてしまわない説得力があった。こんな風に愛を語る妻が殺されてしまったら、夫が復讐に走っても仕方ないよねっていう。やっぱえりさんと井俣さんはカップル役も多かった人たちだし、そこの流れのスムーズさは客演さんとは比べられないけど。
あと、キャラメルボックスからの客演だった石原さんはこんなにかっこよかったのかと!姿勢も声も顔もいい。丁寧にナチュラルでした。まあ、すべてもっていくほどのパワーがあったかというと、そこはまだまだだったけど。でも、白いスーツがよく似合っていた。
ラストの照明は思いきったなあ。こんなふうにファンタスマゴリアを表現するとは思ってもみなかった。凄かった…。でもちょっとブレーカー落ちないか心配した。笑。あれが良かった分だけ、やっぱり奇術を始めるフーディーニと物語をロマンティックな言葉で締めくくるコナン・ドイルの発声と身体表現がスムーズで伸びのあるものであればと思うんだよ。ベアトリスBの悲しみを自分のことのように抱きしめた霊媒師と、未来の思い出をマルグリットに託すベアトリスBの言葉がすごく伸びやかで切なくて包容力のあるものだっただけに。
まあでも、久しぶりに社中を見たぞ!感がある舞台だったのは単純に嬉しかったです。「半分大人の少年と、半分子どもの大人に」っていうフーディーニの台詞どおりのパッションで駆け抜ける(でももう少し肩の力抜いて)劇団って私は大好きなので。