大人の事情を大人の立場から

浅田真央選手のファイナル進出が厳しくなったことについて、各方面で色々言われていると思いますが、とりあえずまだロステレコム杯のFSも見れていないので、演技自体については言えないし言うつもりはない。
ええと、酷なことを言うようですがスランプの片鱗は既にロスワールドの頃に出ていたので、その度合いに「わちゃー」と思いこそすれ、そんなまさか!とは思っていないんです。で、今までの報道を考えれば五輪シーズンにエース兼アイドルとして祭り上げられることも予測済みです。それこそトリノの頃、あんな馬鹿騒ぎがあったんだから、何も考えなかった、彼女は違うと思っていたってことはないだろうし。
スポンサーやマスコミの報道をあげつらう声もあるようですが、それだって有る程度は仕方のないことです。スポンサーは彼女の才能を買って「応援している」ことをアピールし、代わりに彼女は資金なり環境の充実というメリットを受けとる。マスコミの報道によってフィギュアブームが起きたことでの弊害はあるけれど、競技が注目されることで閉鎖になるはずだったリンクが存続したり、経済的理由から競技を断念せずに済んだ選手もいるんだと思うし片方だけを責めてはいけないなと思う。
競技にはいろんな「大人の事情」があって、それは悪いことだけじゃなくてお金を落としてもらうには必要なことで、でもそこに対する向き合い方は選手個人やチームに帰結するんだよなあ。支援は色々受けているけれど、地元にいると集中できないと言ってほぼカナダに籠りっきりなユナ・キム選手だっていますし。アメリカやユーロではモデル活動をしている選手もいれば学業と両立させている選手もいます。
日本のフィギュアスケート選手に対するエロ目線やロリ目線の報道はうんざりすることも多いし、男子やペアやダンスの扱いの悪さは泣けるし、変えていってほしい、変えていかなくてはと思いますが、「やめろ!」と言ってなくなるものでもない以上、選手たちは個人で状況を整理したうえで対策を考えていく必要があって、ユナや安藤さんみたいに外国に拠点を置いてストレスを軽減する方法も、日常の生活を大事にするジョアニーみたいな方法もある。浅田さんみたいに、国内で家族と一緒の生活リズムを作りながら「チーム真央」体勢を確立する方法もある。この方法論には本人とコーチの意向や性格が絡んでくるし、正解はない。
で、浅田選手は苦境に立たされているわけですが、だからといってマスコミが「そっと見守りますよ」となることはないです。絶対に。だって彼らはバンクーバーのヒロインがほしくて4年前から準備してきたんだもの。それは汚い!大人の都合だ!っていっても、そりゃ都合や事情は報道する側にもあるんだし、彼らはそれで飯食ってるんだから「いい部分だけ取り上げて、あとはそっとしておきますよ」という良識的な感じに今更できるわけない。ファンとしては悲しいけど、注目を浴びるっていうのはそういうことだ。
それは非常にいやらしいことですが、仕方ない利用してやるさ!くらいの割り切り含めて浅田選手には期待したいです。大変だと思うけど。手法や方法論は本人が納得いけばそれでいいよ。ロシアに籠ろうが日本で調整しようが、ちょっとだけ別の先生にジャンプ見てもらおうが、3Aにやっぱりこだわろうが3Aは1回にして質のいい3-2からスタートしようが。マスコミやスポンサーの意向としても、彼女が自分の夢をかなえる姿を見せれば当面は満足するわけで、それは彼女が志す方向とは矛盾していないと思うのです。結果が出ればみんな黙るしかない以上、乗り越えるしかないんだよね、…って、タラソワ先生の言葉に帰結するけど。
まあ私達個人ファンは「大人の事情」なんて知ったこっちゃないので、彼女を静かに見守り応援するしかないですね。他の選手との比較もジャッジ批判も「昔に戻って」という言葉も意味をなさない以上、見守り続けるしかないです。それが愛ってことだと私は思います。間違っても彼女に対して「○○あげジャッジに苛められている可哀想なまおちゃん」って文脈を使ってはいけないのだ。自分が真剣に向き合おうとして巧く行かないことに対して、そんな言葉は「情けない」という批判よりも残虐だ。憐みも同情も可哀想がりも勘弁。彼女の強さを信じたいと私は思います。そして、彼女を愛する人には「信じています」「自分を信じてね」って言葉をかけてあげてほしいと思います。それだけです。