ガス人間第1号

@シアタークリエ。何気にクリエ初めてだったりします。いい劇場だなあ、パルコよりちょっと広いのかな?内装も綺麗だしホワイエも。
中村中のための舞台でした。それくらい彼女が素晴らしかった。あの柔らかいアルトの声、長身、白い肌と黒髪、くっきりした目鼻立ち。そして人の心にすいっと入ってくる芝居と歌。これだけの才能溢れる人だったんだ…ということを再確認。彼女を舞台で見るのは「ヘドヴィク・アンド・アングリーインチ」以来でしたが、素晴らしかったです。ラストシーンなんて聖母様のようだった。劇中歌は、大王作品ってことを考えるともう少し優しいものが良かったような気もするけれど、結局頭の中をあの歌がぐるぐる回って離れないので、あれで良かったんだろうな。でも最後のドレスはショッキングピンクよりも深紅のほうが。
ストーリーの推進力となるふたり(伊原剛志中山エミリ)は…。エミリのポジションはもっと大人っぽくて落ち着いた人のが良かったんじゃないか。普段のおきゃんな感じやしたたかさは良かったんだけど、やっぱりシリアスなシーンになるとあの声が浮く。そして、浮いた分をカバーしなきゃいけない伊原さんが全体のドタバタから浮く。「首を突っ込むな」と岡本刑事(伊原さん)に言われて京子(エミリ)が怒るシーンは、彼を利用しながらも恋をし始めている京子の切なさもにじませてほしかった。そうじゃないと、ただのわがまま娘に見えてしまう。
橋本君@高橋一生はだんだん破綻する役かと思ったら、最初から破綻してたね…。うん。悲しい役で、もう自分でもどうしようもない、どうしようもないから千代を女神のように崇め、彼女の幸せを叶えようとする。橋本にとって千代は愛する人であり憧れの人であり女神で、彼女のためなら簡単に人を殺すくせに、殺したことで彼女が傷つくって事実にはもう気付けないほど追い詰められている。せつないわあ…。橋本と千代の関係を見ていて思い出したのは「嵐になるまで待って」の波多野と雪絵の関係でした。あれも「特殊な能力を持った人間が、愛する人を救うために人を殺した挙句に破滅する」話だったけど。「ぼくはもうあなたのためにしか生きてないんです」っていう泣きそうな台詞が痛々しくて、この役もうちょっと序盤の出番を増やしてほしかったなと思いました。これまた素晴らしかった盲目のエンジニア役の三谷さんが「昔助けた猫が、恩返しのためか毎日ネズミをとってきた。私はそれが悲しかった。猫が恩返しをしようとするためにネズミが死ぬのが。でもあの猫は本当は、あなたに抱きしめてほしかったんだろうね」っていう寓話をするシーンでの、それこそ子猫のような表情を見るにつけ。このふたりの関係の深さをもっと序盤から見たかったです。
再三言いますが中村中のあのマリア様のような存在感と情感は、もっと舞台で活かすべきだと思います。彼女には本当にミュージカルやってほしい。使い方は難しそうだけど。でも、ミュージカルアルバムとか出してほしいです。レミゼの「夢破れて」やキャッツの「メモリー」を歌ってほしいなって。
あーしかし中村中美しかったわ…。
あと、ラストは「大王自重」と思った。っていうか水野久美さんが怖い…往年の大女優ってこれだから好きだ。