蛮幽鬼

JOと蟹OIを観ていて「ジョアニー・ロシェットは即座にFS衣装の背中の肌襦袢を取るべきだ」と強く思いましたよ。背筋という最大のアクセサリーを活かさないなんて、ジョアニーはなんてもったいないことをしているの!
さて本日の観劇@新橋演舞場。「蛮幽鬼」ソワレに赴いてきました。今日はなにしろフィンランディアだのCOI完全版だの朝日での男子特集だの、フィギュア好き的にはアワワな状況だったので、席に着いた時点では「集中できなかったらどうしよう…」って感じだったのですが、心配無用でした。いやー、面白かった。
だってね、早乙女太一堺雅人上川隆也の殺陣ガチバトルなんですよ。これがどれほど凄いかっていうと、ステファン・ランビエールジェフリー・バトル本田武史が全盛期(ランビエールだけちょっと若め)の夢の競演プログラム!みたいな感じで。なんてことない動きも華やかで流麗な魅せるタイプの早乙女、線の細さはあれど無駄なく正確かつシンプルな動きですいすいと周囲を切り分けていく堺、前者ふたりの華やかさに比べると地味だが味わい深さと男っぽさ溢れる上川、みたいな。もう本当に、この3者入り乱れての殺陣の素晴らしいのなんのって。
早乙女君の殺陣は本当に「魅せるため」を極めたらこうなった!って感じで、「人を斬れるような殺陣」を目指したキャラメルボックス育ちの上川さんとは真逆の方向性で美しかったです。最初の立ち回りの後に、思わず拍手が出たもの。そりゃあ、おばさま方が散々この子を追いかけまわすわけだ。台詞の滑舌がちょっとアレでしたが、これで台詞と発声もよくなったら凄いよなあ…って感じ。新感線でやるなら、今度は森山未來×早乙女太一って布陣が観てみたい。超観たい。ダメですかいのうえさん。
堺雅人は卑怯でした。芝居が始まる前から「笑いながら人を斬るような、堺雅人にしかできない役」といのうえさんが発言していて、そりゃ堺雅人ならではだろうよ、でもそんな堺的ベタでいいのかあ?と思ったけれど…畜生、持って行かれた(笑)真意が読めない役って難しくて、あまりにも腹の底を見せるとあざといし、見えなすぎても何も考えていないように見えてしまうんだけれど、この人はその絶妙さが崩れない。人間くささと狂気がサジという男の中に共存していて、ものすごい説得力でした。殺陣も素晴らしかった。あんなふうに殺されるのは嫌です。
上川さんはもうコンマス的な感じ。どうしても堺・早乙女に目線を持っていかれることが多いタイプの主役なんだけど、上川さんがいるだけで安心して観られる。本当に主役の人だなあと思いました。若い留学生がいまだに無理がないのも素敵。
女性陣は…高田聖子おねえさまの芝居に泣きました。ペナンの「海へ出よう」という言葉が切なくて。彼女は土門に恋していたのか、いなかったのか、それが明示はされないんだけど、もうあの切なさだけで私はボロボロ泣いてしまった。しかし彼女、腹を出すシーンがあるんだけど…いくつなんだ。あのウエストの素晴らしさ!くびれてる!脂肪?なにそれといったヘソ具合。おねえさま素敵。私、まだ25なのに最近たるんでるから、頑張って筋トレするわ。鹿女やロクロク、七芽も控えめながらすごく良いキャラだった。鹿女の死はせつなかったな。
稲森さんは、もーちょっと台詞回し…が…いや、もうあの美しさは説得力があるんだけど、高岡さんや松雪さんの台詞と比べるとどうにも。あ、でも白い服でたたずむ姿は聖母マリアのようでもあり、民衆を率いる自由の女神のようでもあり、美しいって本当に才能だよなあと思いました。
話の内容はシェイクスピアにありそうな感じで、シンプルなんだけど含蓄に富んでいて泣けるものでした。3時間あっという間。細かいことを考え出すときりがないんだけど、濃密で笑えて泣けて興奮できて、これ以上ないっていうか。私、芝居は基本ひとりで行くんだけど、こればっかりは「誰か誘えばよかったなあ!」って感じです。こんなに起承転結がしっくり来て、全部の伏線が(強引さはあれど)ぱしっと回収されて…って芝居はあまりないと思うんだ。