読了リスト

北村薫の「円紫さんと私」シリーズをイッキ読み。
ベッキーさんシリーズのほうを先に読んでいたので、英子さんと≪私≫の経験の対比をしながら面白く読めた。

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

人の悪意を見せる「赤頭巾」、善意を見せる「空飛ぶ馬」の対比が好き。ゆきちゃんの件で本気で怒る正ちゃんの正義感も。

夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

姉である人間としては、≪私≫の姉さんの気ままに見えて根底で保守的なところに共感してみたり。弟妹に対する嫉妬心とか。いやあ、しかしあのマッシュルームカットの女。ああいう手合いが一番嫌いなんだ。本当にあの手の女は(以下略)…自分の悪意に自覚的な「赤頭巾」の絵描きさんのほうがよっぽど善良ですよ。ええ。

秋の花 (創元推理文庫)

秋の花 (創元推理文庫)

真相発覚部分で泣いた。日常を丁寧に書いてきた作品だからこそ、事件の真相がわかっても日常が続いていくんだなと思ってしまって。簡単に許しをもたらさず、それでも救うことはできるという論調がシビアだけど暖かだった。

六の宮の姫君 (創元推理文庫)

六の宮の姫君 (創元推理文庫)

これ読んで卒論を「芥川龍之介菊池寛」にして怒られた文学部日本文学専攻の学生がけっこういると見た!「君、北村薫の『六の宮の姫君』読んだでしょ!」ってな。文献まで丁寧に書いてくれちゃってるんだもんな。真珠夫人は本当に昼ドラになったね。うん、慧眼だよ≪私≫。ところで物語中で一番心に残ったのが、菊池寛の戯曲「世評」の紹介だったりする。
売られた貴族の娘を群衆は憐み「鎖を断ってしまえ」「愛してくれる青年の元へ行けばいい」という。1年後、愛してくれる青年と逃げ子をなした彼女を群衆は責め立て「姦通だ」「人でなし」と罵り石を投げる。彼女は群衆の石に倒れ、石が当たった子どもは泣き叫ぶ。いい気味だと嘲笑う群衆は「でも、こんなにひどくやられると可哀想ね」と言う…ってな話。なんかねえ、つまされますねえ。

よしと云いあしと云われつ難波がたうきふししげき世を渡るかな

マスコミでも個人でも、持ち上げて叩いてまた哀れむのは古今東西変わらないんだよね。私たちは単純にマスコミのみを批判すべきでも、振り回されるべきでもない。何が真実なのか決めるのは私たちの心なんだから。

朝霧 (創元推理文庫)

朝霧 (創元推理文庫)

≪私≫は結局、彼氏いない暦24年のままですが、私の周りにも美人でチャーミングで年齢=彼氏いない暦の女性はまあまあいるので、不思議はないです。彼女たちはなぜか大抵、年に一度くらい変な男の子に付きまとわれている。もてないわけじゃないんだけどねっていう。
出版社の裏側が覗けて楽しいのと、姉さんの子があっという間に喋るようになっていて驚いたのと、正ちゃんが「ボク」って言わなくなったのが寂しいのと。飯山さんの友達と≪私≫はうまくいったのかなあ。うまくいってるといいなあ。≪私≫の恋人を書けなかったから、ベッキーさんシリーズの英子さんには仄かな想いを寄せ合う青年将校を作ったのかなあ…なんて。

でもって、これも読んだ。

夏への扉[新訳版]

夏への扉[新訳版]

ジンジャエールを飲む猫が…」ってのは色んなところで紹介されてる気がするSFの古典。新訳版の表紙が素敵で買ってしまった。家事が自動化されて凄い技術がいっぱいあるのに、電話帳と公衆電話が健在な2000年に爆笑。ネットも携帯もないんだ、1950年代の人が想像した2000年には!いやあ、凄いね。現実とSFってある意味、追いつき追い越しだね。本物の2000年では、人の消息知りたかったらまずはググるよ、ダン!
でも恋愛部分はどうなの。ベルに嵌められたからって「やっぱりリッキーにしとけば…」って!早まるなダン。お前の世界はベル(セクシー系悪女)かリッキー(聡明な小学生)の2択なのか。世界は広いぞダン。まあ小学生のうちに手を出さなかったので良しとしようか。でもなあ、これで運命って言われてもなあ…。
そしてリッキーは思春期に出会ったどんな男よりコールドスリープ中のダンが良かったのか。お前の世界は1択なのか。世界は広ry