選ばれる人は一握りなのが現実だけど、皆が特別なのは間違いじゃないよね

今日の芝居「コーラスラインBunkamuraオーチャードホール


CMなんかでよく使われるから、コーラスラインの「ワン」を聞いたことのある人は多い。でも、ちゃんと聞いたことのない人の中には「誰もが素敵な人だ」という歌だと勘違いしているケースも多いんじゃないか。
あの歌は、舞台には出てこない主演女優を称える歌。誰もが彼女を好きにならずにいられない、彼女は最高!世界にひとりの人だって歌。けれどこの歌の意味は、本当は違うところにある。名前も呼ばれないアンサンブルのひとりひとりに物語があること、ひとりひとりが特別な世界にたった一人だということを、観客は知っている。その物語も。だから「ワン」は、歌詞とは違った意味を舞台と客席が共有できる、とても珍しいタイプの曲だと思う。
人はみんな世界にひとつだけの花だという歌が、何年か前に流行った。そのロジックは否定しない。けれど、目立つ花もあれば目立たない花もある。選ばれる花もあれば選ばれない花もある。人間は花じゃないから、選ばれたい人に選ばれなければ凹むし、目立つ花は目立たない花に妬まれて疲れることもあるだろう。世間は残酷でとっても理不尽。それでも、自分が愛したこと、選んだことを悔やまずに生きていくこと。その美しさが心を打つ舞台でした。


オーディショニーにザックは「良いメンバーを選ぶために、君たちの個性が見たい」という。一方でキャシーには「君は個性的で目立ちすぎる、コーラスなんかに似合わない」という。矛盾した意見。でも、ザックは決してオーディショニーを馬鹿にしていないし、キャシーに意地悪がしたいわけでもない。
憧れの世界だけれど、ひとつの怪我やひとつの失敗で一生を棒に振るかもしれない。今回は選ばれても、次の公演への出演の保証はない。そんな生き方だけど皆続けたいと思っている。矛盾した感情。それでもみんな舞台が好きだ。



世界は矛盾して理不尽で残酷でとってもきれい。



だからこそ、私も愛した日々を悔やまずに生きていきたい。




「愛した日々に悔いはない」の「いつかは返す贈り物だった」っていう歌詞とか、「アット・ザ・バレエ」の「そこは楽園じゃなかったけれど私の居場所だった」とか、色々好きな台詞や好きな歌詞はあるけれど、特に好きなものは、やっぱりミュージック・アンド・ザ・ミラーの"God, I'm a dancer! The Dancer dances!"かなあ。魂の叫びという感じがして胸を打つ。
キャシー役の女優さんはすごく素敵だった。あとディアナもすごく声が良かった。シーラはセクシーだった。ヴァルはもう少し押しが強いほうが好き。ポールのところは英語がもう少しできればと思った。マイクはもう少し惹きつけがほしかった。ジュディはとてもチャーミングだった。


しかし、もう少しフィギュアスケートに使われてもいいと思うのです。コーラスラインって。特に「ミュージック・アンド・ザ・ミラー」なんて振り付けもかっこいいし、誰かエキシで使いませんかね。