鋼の錬金術師23巻・雑記

えーと「鋼の錬金術師」23巻を読んだのですよ。
だいたい5巻あたりで殺されたヒューズ中佐の敵討ちについての決着がようやく23巻にてついたわけで。いやあ長かった。今ちょうどアニメをやっていて、前回ラストV.S.マスタング→今日発売のコミックスでエンヴィーV.S.マスタングで、まるでどこかの誰かがマスタング祭☆って感じです。

鋼の錬金術師 23 (ガンガンコミックス)

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まあ、結論から言うと予想通り、マスタング君は己の手で親友の仇を殺せなかったわけで。全然うまく言えないけれど、それで良かったんだなあと思います。彼が冷静なら敵討ち展開もありだと思えたかもしれないけれど、明らかに常軌を逸したけだものの顔をしていたもの。彼があんなふうになることは誰も望んでいない。あんなふうに仇をなぶり殺したと知ったら、グレイシアさんはものすごく傷つく。彼を信じて表で戦っている部下だって傷つく。生きている人間、自分を大切にしてくれる人間を傷つけるようなことをしてはいけないです。…マスタングは文字通り燃え尽き中ですが。
たぶん、あんなふうになったってことはマスタング自体にも迷いがあったんだよね。ヒューズを殺した奴が憎いだけじゃなくて、何故錬金術や賢者の石にかかわりのないはずの彼が殺されなければならなかったのか、自分には防げなかったのか、どうして巻き込んだのか…という。情が濃くて頭がいいからこそ、自分にできなかったこと、するべきこと、どうしていくべきかという逡巡があったのかもしれない。それがなかったら、むしろきちんと復讐を果たせていたのかもしれないと思いました。
でもねえ、復讐を果たせない人間くらいでちょうどいいんだと思うよ。そういう、悩んだり迷ったり苦しんだりする「弱い心の人」であることにこそ、マスタングの良いところはあるんだと思う。少なくともカリスマ性ではオリヴィエにかなわないんだから、人間らしさを売りにするといいよマスタング
あと、ホークアイは絶対マスタングを殺せないと思っていたので、彼女の行動はいい意味で意外でした。ラスト戦で泣いたとき、ホークアイマスタングを殺すにはあまりに女になりすぎた、優しすぎると思ったんですよ。だから、彼女が殺せない彼をエドとスカーが止めるんだろうなと思っていたけれど、彼女が結局最後の留め金となったわけで。あのラスト戦の意味を彼女は彼女なりに一生懸命考えて、自分のなりたい自分になるべく精進を重ねたのかもなあと思いました。
エンヴィーの自殺。嫉妬と憧れはコインの表裏であり、もっとも馬鹿にしていた相手である「まっすぐな少年」エドに一番憧れていたのか、エンヴィーは。エンヴィーに静かに語りかけるエドは子どもの理論・馬鹿正直な真っ直ぐさで生きていて、その清しさこそが物語上の役割だよなあ。アルが(理由づけはあったにせよ)きちんと割り切って賢者の石を使って戦ったのに対して、エドは一生それができないんだろうな、できないからこそエンヴィーに向かってあの言葉を言ってあげられたんだなと。そして最終決戦で、エドの武器になるのは錬金術でも体術でもなく、そのまっすぐな少年としての面なのだと思いました。
彼は今まで人を殺さずに来ているけれど、最後の最後にプライドに対してだけは手を下すかもしれないと思っていて、それが少年の通過儀礼――まっすぐな少年からまっすぐな青年への――になるのかもしれないと思っています。今まで背負ってきた目に見えない罪悪感が「ブラッドレイ夫人の大切な人を奪ってしまった」という意味で具現化するというのもありかなと。等価交換の法則が少しずつ揺らぎ始め、それよりも人間の意志の力が強いのだとなってきた今の展開だからこそ思うのだけれど。

以下、雑誌までネタバレ的な感じなのでたたみます。


しかし、最新号を読む限りでは相変わらずマスタングは「ホークアイなら大抵のことは赦してくれる」と思っていそうな…「あれは中尉のおかげ」ってあんたねえ…エドとスカーに対しては照れ臭いけどホークアイに関しては違うのか。あんたのそういう甘さはどうなのよ。照れるなら皆に対して照れればいいのに、ホークアイさんは正直撃っていいと思うよその男。