健気さ強化月間

日本を代表する、いや世界に誇るくらいじゃじゃ馬なフィギュアスケーターのファンをやっているのは、もちろん彼女が素敵に面白くて魅力たっぷりだからなのですが、そんな私でもたまにはじゃじゃ馬ではなく健気な女の子の話にぐっとくることもあるわけで。
やたらと書店でプッシュされてるもんだから買ってみたのさ。

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)

宮部みゆきの「初ものがたり」と「霊験お初シリーズ」をいいとこ取りして「御宿かわせみ」シリーズでラッピングしたような雰囲気だと想定していたら、まあ想定の範囲のストーリーですが…これがすごく面白かった。
主人公の澪は上方出身・家族を水害で亡くしてさる料理屋に引き取られ、女だてらに味覚の良さを見込まれて料理人見習いに。しかし江戸に出店したはずの若旦那が行方知れずになり、旦那様も火事に巻き込まれ死亡、奥様と一緒に江戸へ出てお店の再建を目指しながら「つる屋」という蕎麦屋で料理人修業を重ねていく…という話。
この澪が健気でねえ。一生懸命心をこめて料理を考えるわけ。
もちろんこの手の話につきものの人情話がてんこ盛りで、つる屋の主人が澪をやとういきさつになった死んだ娘の思い出とか、水害で離ればなれになった幼馴染が実は…とか、お稲荷様のエピソードとか、長屋の隣人の子どもの話とか。まあベタなんだけど、ベタにも技術は必要なわけで。
ここまできたらベタはベタなりに、やっぱり青年医師と澪には淡い恋心とか芽生えるのかなあと思ってみたりしている。医師が食事療法についての助言をするシーンもあるし、薬膳料理を澪が頑張って作ってみたり。

でもって、あまりに面白かったから同じ作者のこれも買った。

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こっちは寺に引き取られた少女・お縁の話。湯灌という、いわば柩に入れる前の死体を洗う仕事に生きがいを見出していく、最近の作品なので「江戸時代版おくりびと」というキャッチがついたりしている。個々のエピソードもいいのだけれど、秀逸なのが湯灌の描写。亡骸をいつくしむように扱い、苦悶の表情を浮かべていたひとを少しでも安らかに逝けるように心をこめる。そんな仕事に正面から向き合うお縁はそりゃ健気なのですよ。舞台が寺なのでレギュラーメンバーはみな和尚で、こちらは色恋期待できない感じ。

この高田郁という人は、漫画の原作者から小説で賞を取って出てきた人で、「八朔の雪」のほうはすでにシリーズ化が決まっているらしい。今後もまたあさひ太夫との絡みがあったり、医師とのロマンスがあったり、失踪した若旦那がらみの話があったり、隣の太一ちゃんの両親が出てきてひと騒動…なんてふうに続いていくのだろうか。澪のつくるなんともおいしそうな料理が縦糸としてあることは前提だけれど。
でもって、きっとこれドラマ化するね!NHKの土曜八時とかに。ヒロインは池脇千鶴とか貫地谷しほりとかそういう感じ。