NHK杯・2日目

いやはや。一日中テレビの前に陣取っているのはなかなかに辛いものですねー、好きでやってるし面白いけど。皆様のお目目はいかがですか。わたしは疲れ目です。さて、男子SP→アイスダンスFD→ペアFS→女子FSの怒涛の展開、ジャッジの皆様やコーチ陣、もちろん選手の方々も大変だったと思いますが、簡単に印象に残ったところだけ。

男子SP
・明確に空気が変わったのはアモディオの変態ステップからだったような。無良くんの4-3は素敵だったしウー君もいい演技だったけど、まだ本調子じゃなかった。でもアモディオはなんか漲ってた。今までの洒脱なアモディオとはちょっと違うけど、いい感じでコーチの課題についてってる感じ。これで自分の色を入れていけると相当すごいことになりそう。先生の課題に対してきちっと答えた上でプラスオンしていける生徒だと、モロ先生んとこには合う(いるときは得るものがあるし、離れてもその学びの姿勢自体は有意義)だと思いますよ。しかしステップの凄まじい速さは寧ろ笑えた。
・羽生君は物おじしてなかったねー。あれだけ自分の空気感のあるひとの後で滑って、自分らしさを提示できるのが凄い。しかも自分らしさが若さゆえの頑なさではなく、色々と分析してそうなのが凄い。プルシェンコとかジョニーとか、いろんな先輩スケーターの影響で語られることの多い彼ですが、羽生結弦羽生結弦みたいになればいいよ、と思った。
・わたしたちのソーヤーがとったな!要素が減ったおかげでアサシンズ・タンゴが一層タンゴっぽさを増して帰ってきた!衣装も素敵!そしてスピンも明らかに上手くなっている。ランビエール級とまではいかないものの、軸が幻視できるレベルで回転が鋭くて楽しかったです。3Aについては仕様です。
・ハイク上で物凄い勢いで「シュルタイスが」「イケメンになった」「普通にかっこいい」というコメントが流れたくだりは笑えました。きっとtwitter上とか巨大掲示板上でも似たような流れだったんじゃないかと推察します。滑りだしたらシュルタイスでしたが、ちょっと前までは1プロ滑り終ると頭皮まで真っ赤になるくらいスタミナがなかった彼だと思うと感慨深いものがありますね。独特だったけど今までよりは大衆受けも考えているという、個性派シンガーソングライターが売れるために計算し始めた時期の意欲作みたいなプロでした。FSのロミジュリが色んな意味で楽しみです。
デニス・テン君の衣装がライサチェックみたいになったな…フランク先生だしな…と思っていたら振付はランビエールだったでござるの巻。しかし高橋「アメリ」のときに散々「あいつは自分みたいなプロしか作れないのか」と言われていたけれど、ランビエールがやればできる男だったのか、あるいはデニスの自分らしさが凄いのか。いっぱしの男のようなキレとすっきりした味わいのあるタンゴで斬新でした。このプロが1年間見れると思うとわくわくします。
・高橋君は入ってから出ていくまで本格的にスター様。プログラム自体もキレててよかったのですが「みんな、俺のこと好きだろ?…知ってる」みたいなオーラが凄くて、いいスケーターはいっぱいいるけどそういうスケーターは一握りなので、本格的にわーっと思いました。高橋君観てるとあの場に行ってコマされたくなるね。思う存分「愛してまーす!」と言ってやるわよ、みたいな。
・その高橋ワンマンショーの後にがらっと男の色気プロを滑ったアボットのかっこよさについて述べたい。新生アボットは抱かれたい男ナンバーワンって感じでセクスィーです。あんなツイートをする男があんなにかっこいいわけないっていうくらい。衣装もちょっと変わってて好みです。ちょっとジャンプがいつにもまして低空だった気がしますが、全体の雰囲気は良かったし、強くなったなあという印象。スピンのノーカンさえなければ高橋君ともっと近づけたのに…っていう。


アイスンダンスFD
・月光をやった中国のカップルと、メドレーだったチェコカップルの編曲がめっためたで凄かった。伝説のロクサランフェスを彷彿とさせてそれよりも破壊力強め、みたいな。あれはいいんですか!ダンシングなんですか!や、チェコカップルは好き放題踊れる感じの曲のパッケージだったけど。
・イギリスのカップルの「ライオンキング」、男性の衣装がうり坊みたいなことになっていたのですが、それ以上に面白かったのが最後の規定外リフト〜フィニッシュまでの流れの中で「女性が男性の膝に足をかけ、何かを持ってる風に両腕を伸ばす」という動きがあったことです。あれは絶対にライオンキングのオープニングとラストシーンに出てくる、ライオンの王様が自分の子ライオンを動物たちにお披露目するシーンからインスパイアされている。面白いなと思っていたらプラトフ先生んとこのカップルだった。なるほどねー。
・リードさんちは非常に雰囲気のいいプロでした。本人たちも「もうちょっとはずんでや」と思ってるみたいですが、こっちもチェコ組よりは…うーん、という気分に。たぶん細かいミスが響いたんじゃないかなと思いますが、うっとり系で滋味あふれるいいプロなので、more practiceでがんばってほしいものだ。
ボールルームダンスみたいで凄かったシブタニズ。ここの組は妹もだけど、お兄ちゃんの動きがいちいち決まってて本当に素敵。いつもぴんっと背筋が伸びていて、ちょっと首を切るだけみたいな動きが綺麗なことがかなりいい方向に働いている。ステップの最後の方でカーブしながらクイっと首をこちらに向けた所作がとても素敵で、ああいうのみんな真似すればいいのに!と思った。ぱあっと華やかになるような演技で表彰台。おめでとう!そしてオフアイスだと同じ顔に見える。表情が似てるんだな。
カッペリーニちゃんの調子が途中から明らかに噛み合わなくなっていて心配です。ここのカップルはイタリアなのに睨み合わないよね…。いや、睨み合えとは言わないけど。ふたりとも衣装も演技ももうちょっと華やかさプラスオンしていいと思うの。
・イリニフたんのスカート可愛い。シブタニズがボールルームなら、彼らはオンステージといったドン・キでした。さすがおろしあ。こっち方面の正統派ならおまかせあれ!といったカップルは1組いると華やいでいいよね。
フィギュアスケートムーランルージュは結構使われますが、これが一番好きかも知れないと思ったウィーバー・ポジェ組。「スパークリング・ダイヤモンズ→カム・ワット・メイ→ロクサーヌ」という流れなので「駆け引き→熱愛→不信」という感じなのかしら。終始ケイトリンが美人に見えたのが成長の証しだと思います。
・メリチャリってどんどんと上手くなるなあ。チャーリーのひげは自分的にあまり好みでないのですが、ファニーフェイスの坊やに見えないという意味では成功してるかも。何割増しかで大人びたカップルに見えました。プログラムも今までのような力技感ではなく、きっちりと手駒を磨いたうえで出していこうという方向っぽい。シーズン初めなので多少荒削りでしたが、さすがの貫録でした。そしてメリルの声は今日も可愛かった。ありがとー。


ペアFS
・このへんになるとだんだん観てるのがしんどくなってくる。だって終始画面が…白い…
・ヤナコフのアヴェマリアは素晴らしいプログラムで心洗われるようでした。うっとり。でもうっとりしすぎて眠気が…
・密かに応援しているボロデュール・マタトール組ですが、直前の日程になったそうであまり本調子ではなさそうでしたね。このふたりの醸し出すほのぼの感がもっと全体に行きわたると、みんなが笑顔になれるプロが出来上がりそうです。
デニー・バレット組のスピード感あふれるスポーティーな魅力に「ラプソディー・イン・ブルー」はぴったりだと思ったし楽しかったんだけど、点が伸びなかったなあ。去年は最終でれなちゃんたち・ゆうこちゃんたち・パントンという、ペアの中でも日本で人気の高い人たちに混じっての滑走だったことを思い出しました。相性悪いとか思わないでまた来てね!
・「普段から大人っぽくするよう心がけている」らしい成美ちゃん。具体的に何をしているんだと突っ込みたいところですが、確かに普段からちゃんとお化粧したり、ヒール履いて学校行くだけでもだいぶ心構えは違ってきますからね。氷上での色っぽさは格段に増してるし。さすがに緊張していたのかジャンプに堅さが見受けられましたが、リフトやスパイラルのポジションの美しさがぐっと向上して、すっかりシニアで見劣りしない風になっていました。トラン君も順調に男前に育っている。表彰台おめでとう!日本での報道も増えてほしいし、どうにか日本代表として五輪に出られるようになってほしいなあ。演技前のげんこつこっつんこの可愛さは反則です。そして10代日本選手の中で最速で流し目を取得したのは成美ちゃんでしたね。
・五輪で観たときに「いい雰囲気だな」と思ったバザロワたちが、さらに上手くなっていたなあと。このふたりがこんなふうになったなら、ロシアも安泰じゃないの?表現もいいし技術も申し分ないし、あとは相性と女の子の身長か…とここまで考えて去年のNHK杯を思い出しました。すっかり背が伸びたクラシルニコワがとても大変そうだったからな…。今はまだ少女体型なバザロワたんですが、彼女の演技はとてもいいので、あまり辛くない成長をしてくれればいいなと思って祈ってます。
・大人の愛というかエロスというか、エロス込みの愛というか、最終的にはうっとり増量・はみ出でお届けされそうなパントン「愛の夢」。なんか凄かったねえ…。倦怠期の夫婦とか恋人同士は、このプログラムを腰を落ち着けてゆっくり観てみてはどうだろう。ラストの見つめあうふたりの空気そのままに、大事な人と見つめあってみてはどうだろう…何言ってるんだろうわたし…。駄目だ、まだシーズン序盤だしジャンプも微妙に不調そうだったのに、思い出しうっとりしてしまう。パントン恐るべし。優勝おめでとう。


女子FS
・浅田さんの調整は本当に抜本的らしくて、ゆっくり焦らずやってってほしい感じ。たとい「途中なんだ」と本人が思っていても、やはり他人に順位をつけられることはしんどいだろうし、たくさんの目が内包する期待にこたえられないことは辛いだろう。こういう風になってる状態で試合に出ることはある意味大変なことで、試合自体・負け自体に対する葛藤が生まれてしまう場合もある。だからこそ今まで以上に「出るのか・出ないのか」「挑戦するのか・とにかくいい印象で滑り切るのか」など色々なことを冷静に、先生と話し合って決めていってほしいなと思います。大丈夫、あなたはひとりじゃない。
・ジェナのFSはちょっと…ちょっとでしたね…。そういえばBShiでやってくれたSPは良かったよ…。わたしはジェナの「どうよ!」が見れるとけっこう幸せになるタイプなので、がんばってほしい。
・キャロラインは体調管理が大変な時期に差し掛かった模様なのに、ジャンプ自体はけっこう修正されてるところが本当に素晴らしいので、あまり根を詰めすぎずに表現を追求していってねと思う。がんば!
・コルピにエビータとか超はまり役なのですが、ちょーっと固かったかな。ミュージカル好きとしては「ハロー!ブエノスアイレス」でのステップというのが気になりました。エビータなら「空をゆく」が好きなのでどっかに入れてほしかった。しかしこれ、ノーミスいけたら皆コルピ信者になってしまいそう。
・ジャンプが崩れてもスピンなんかは崩さないアシュリーが、後半色々とグダってしまったことに体調面での心配をしてしまいます。大丈夫かしら。マラゲーニャは目千両を活かすギラギラした印象と、動きのシャープな色っぽさが両方味わえるいいプログラムだと思うので、ぜひウェルカム東京。
・芝居好きとしてはたまらないレイチェルさんのプログラム。小芝居が全体の印象を崩さずに入ってるし、常に演技してる&演技自体がとっても楽しそうだから幸せになります。すごい女優だなあ。大学入ってもどうにか両立してほしいもんだ。
・シニアデビューはそないに甘いもんやおまへんで、というディダクション3になっちまった佳菜子ちゃんでしたが、終始一生懸命だったのが良かったと思います。ステップ、疲れてたんだろうけどちゃんと剣術風の動きを守ろうとしてるところに、このプログラムを好きな気持ちが伝わってきました。好きなものを好き!と表現する強さ、いっぱい練習したのに悔しい!と言い切る強さで次もがんば。表彰台おめでとう。
・なんとなく歪な構成でしたが「戻りたくない場所」というのが結構具体的にありそうなカロリーナさんにとっては、いい一歩になった試合じゃないかなと思います。とても可憐で伸びやかな「牧神の午後への前奏曲」でした。自分は大丈夫だと信じることこそが、カロリーナさんの道を作っていくとわたしは思っているので、またあの笑顔を見せてよと心から思う。そしてヴァルと一緒にウェルカム東京。優勝おめでとう。


…書けなかった選手の皆さんごめんなさい…では、また明日も楽しみましょう…(バタッ)