トリノワールド女子について偏った覚書なので話半分に聞いてくれ

結局のところわたしは単純でお手軽な人間です。やっぱり好きな選手がいい演技をすれば嬉しいし、メダルを取れなければ悔しい。プロトコルをしみじみと眺めても、たどり着くのは「わたしがその人を見てどう思ったか」というシンプルな結論でした。そういうふうに単純に見ればフィギュアスケートって楽しいのよ。
 
つまりわたしにとってのトリノワールド女子シングルとは、安藤美姫の6年間だっていう話です。2006年からじゃなくて2004年、シニアデビューからの集大成だったんじゃないかってこと。ウィルソンがマイファニーバレンタインのストーリーを語って聞かせたときに彼女が涙を流して感動した…という話を何かの雑誌でしたのがトリノの前。彼は「美姫は本当は感受性豊かで繊細な子なんだ」と言ってた。そんな彼女にモロゾフは「強いお姫様」「かっこいい女王様」をやらせ続けた。その役は確かに彼女の華やかな肢体や強そうな表情に似合っていて、わたし自身カルメンやシェヘラザードが大好きなのだけど、その彼女とモロゾフトリノで到達した場所が、ハッピーでキュートでナイーブな、ウィルソンが見せたいと思った安藤美姫が成長した姿だった…というのが何ともロマンチ。おもわずじーんと胸が熱くなった。
しかし、やっぱり「競技者」としてリンクに立つのであれば、もっと強さが欲しいところなんじゃないかと思う。これはまだ「この色で描く」と決めたばかりの絵で、それが洗練されて彼女のスタイルとして確立していないんじゃないかって。オリンピックで見つかった答えのひとつめの作品がこのトリノのフリーなんじゃないかって。22歳にしてそういう「新しい自分」を見つけられたのはとても喜ばしいけれど、一方で体力や気力を充実させて、見つかった宝物をもっとブラッシュアップさせていってほしいなと思う。やはりジャンプ構成がこれじゃちょっと物足りないしね。ジャンパーとしては。これからの彼女が楽しみです。…っていうかたぶんまた書く。彼女については。思う存分愛をまき散らすぜ(←気持ち悪い)
あと「良かった!」と泣いたのはカロリーナ・コストナー。カロリーナのこの演技がトリノで見られて本当に良かった。こんな風に喜ぶカロリーナを見れたことを言祝ぎたい。ブラヴォー。辛いシーズンだったと思うし、嫌なこともいっぱいあったと思う。それでも彼女の答えはリンクの上にしかなかったんだな、と思った。ありがとう。来年はヴァルと一緒に東京に来てね!待ってるよ!
うまく書けないけれど、カロリーナもトリノの借りをトリノで返したのだと思いました。去年のワールドの借りもね。やっぱりカロリーナのエレガントな滑りがわたしは好きだし、細かいミスは残念だったものの、ここ数年で最も良かったFSじゃないかという気さえした。しかし今シーズン「むしろゲンが悪いんじゃないか」とさえ思った四つ葉のクローバーのピアスとネックレスはずっと継続だったねー。あれほしい。

あー、メダリストについても。浅田真央選手、優勝おめでとうございます。シーズン序盤からは考えられないほどの精度で演技全体をやり遂げられたことは本当に評価に値します。何よりも凄いのはプロトコルを見る限り、スパイラルとスピンはオールLv.4獲得、ステップもLv.3獲得というそのパーフェクトさ。正直、3Aを決めるよりもこっちのほうが評価すべきだと思う。なにしろメインコーチが実質不在の状態でこれをやったのだから。これがどれほど凄いことか。
個人的な好みから言わせて貰うと、五輪の「鐘」のほうが不思議な凄みはあったと思いました。フィギュアスケートとして美しかったのはワールドなんだけど。五輪のあれはたぶん本人の「立ち向かう姿勢」が曲や振付とがしゃん!と嵌ってシンクロしたんだよなあ。あれは一体何だったんだろうか。とりあえず五輪で芽生えた「がしゃん」という感じが演技に活かされていた…というよりは、とても調子が良い浅田真央らしい演技だったなあと思いました。新生・真央をきちんと見られるのはたぶん来季以降になりそうだ。でも大丈夫。これからどんどん面白くなるはずだもの。彼女の演技。
ユナ・キムはやっぱりお疲れちゃんでしたねー。まあ仕方ない。しかしFSは美しかったと思うんだけど。3-3と2A-3は決めたし、このプログラムをこういう風に滑ったらそりゃPCS出るわって感じだったし。彼女は来季以降どうするんでしょうね。思い切って1シーズンくらい休んでみるのもいいかもしれないなあ。やっぱりモチベの持っていき方が微妙な感じだった。どちらにしても、彼女が幸せだと思える結論ならわたしはいいや。競技者としても面白くなりそうだけど、プロとしても素敵なスケーターになれるだろうと「タイスの瞑想曲」を見る限りでは思うし。
レピストさんは、フリーの演技内容について思うところがないわけではないけれど、そもそもSPの順位が高かったのだし、4位の選手が11位からのジャンプアップ、若手選手が踏ん張りきれなかったことを思うと妥当な順位だと思います。初ワールドメダルおめでとう。FSはジャンプがダブってからも気持ちが全然切れなくて凄かった。そういう「攻める姿勢」がメダルを呼び込んだのだと思う。シーズン通して素晴らしかったんじゃないだろうか。
しかしレピたん、ジャンプ構成に瑕疵のある子だとずっと思っていたんだけど、気付いたらそうでもなくなっているんだよな…1位(3A有りだけど3-3なし、Lz、Sなし)、2位(Loなし)、4位(3-3なし、フリーにFなし)と言うふうに考えると、あまり見劣りしないっていうのが。この年でLzを入れてこれたっていうのは偉い。Fは厳しいかもしれないけど、LzをSPから入れてこれるといいやねえ。もう「幻想の海」は見納めかな。来季は何をやるのか楽しみなんだけど、ピアノレッスンやらないかなあと思う。次にあれをやる女子がいるならレピストさんか安藤美姫だ。ていうかピアノ曲が見たい。だれか久石譲のアルバムをフィンランドに送ればいいと思う。

ミライ・レイチェル・クセーニャあたりは経験の差が出たなという感じ。悪い演技じゃなかったのだけれど、それでもおねいさんたちが凄いから。怖いから。笑。あっこちゃんは調整が難しかったのかなという印象。まー、五輪があれだけ良かったから仕方ない。
なんか色々BS待ち状態なので、ざっと書き程度で。なぜファヌフ飛ばしたし。