エリック・ボンバール杯男女FS覚書

女子シングル
・ユナ子は今すごく表現することが楽しいんじゃないかなと思った。ガーシュウィン、彼女がこの曲を好きなんだって伝わってくる。音楽を効果的に見せるための動き、目線、衣装。試合なのに、お客とのコール・アンド・レスポンスを楽しんでいる雰囲気さえある。SPのとき007全部見たって言ってたけど、色々含めて「あたしだったらどう表現しようか?」と研究して勉強しまくったんだろうなあ。昨シーズンまでの「うまいけど物足りない」感じが消え、ロスワールドの優勝で一気にレディに登りつめたなっていう。ただでさえ勉強家で基礎が固くて表情の付け方がうまい選手が、表現に対して貪欲になるとこの地平まで到達できるのか。美人度あがったのは、なにもメイクの上達だけが理由じゃない。ひたすら感服。
ここで、お客との対話の大切さと楽しさを前々からわかった上でコツコツ技術を磨き、満を持して盛り上がるプロを作っているジョアニー・ロシェットと、ロスワールド後「表現することが楽しいの!」と自覚的に各方面で語り始め、尖った個性派プロを作っている安藤美姫の評価がどう出るのか。そのバランスが非常に楽しみで仕方ない。うずうず。
・真央嬢の「鐘」、実は感情表現のためのアクセントとなる振付が多いことに気付いた。
ダンスの見せ方だって、美しいポジションは指定の拍数ぎりぎりまで伸ばして溜めを作り、移動は音を盗んで早めに動いてスピード感を出すとか、表情の変化と手を連動させると効果的とか色々あるけど、そういうことって振り移しの段階では言われない。でも言わないことを汲み取り見せ方・メリハリを含めて振付を自分のものにして、気持ちを細部に込められるのが良いダンサーなんだよね。例えば振付師が「ちゃら〜って音で右肩から振り向いて笑顔!」って言った場合、目線をあげてぱっと笑うのか、あえて恥らうように眼を伏せて微笑むのか、振り向く前は真顔で最後に笑顔が出るのか、元々微笑んでいるけれど振り向くモーションに沿って笑顔が大きくなるのかは全部違うけど、細かく指定されない限り正解はない。「鐘」にはそういう演じ手の解釈が入り込む余地が多い。これは大人のプログラムだ。彼女自身の解釈とメリハリで見せ場が作れれば面白いことになりそう。
しかしこれ「この曲が大好き」って言えるくらいのめりこんで頭使わないと乗り越えられないプログラムだったりするんじゃないか。それくらい貴女にもできるわ、もっと自分を信じて貪欲になりなさい、あなたを子ども時代のイメージで縛る人を見返してやりなさいっていうタラソワ先生からのメッセージなのか?うーん。
とりあえず、ジャンプの不調(回転不足と2A転倒)とインタビュー時のうつろな表情が気がかり。元気出せーーっ!あと、誰か彼女に素敵な衣装を。
ゆかりんは良いプロに恵まれたなあ…。美しかった。いい表情してた。今回は怪我もあって仕方なかったけど、最後までスピード落ちないともっと良い。特にステップ。
・下位選手から順番に見ていくと、FS滑り切るのって大変なんだなあと思った。グウェンSPは結構雰囲気作りできてたのに、FSは…。アンナはのびやかで良かったけど、あのジャンプじゃ点は伸びない。コルピのスタミナも心配。焼き肉食べるといいよ!
・ゲデ子は本当に良くなったなあ…。もっと体力付いてジャンプが決まるようになれば、ユーロの表彰台狙えるんじゃないか?カルメン良プロでわくわくした。
・カロリーナさんが心配だよ。まだちょっと痛々しいのはジャンプこけてたせいだけじゃないと思うよ。衣装もスカート部分は素敵なのに上半身はカロリーナ比でびみょんだよ。…ティラミス食べて頑張るといいよ。応援してるよ!!!
・キャロラインのあの勿体なさは本当にどうにもならんのか。1シーズン棄てる覚悟でジャンプとスケーティングの矯正したほうがいいんじゃないのか。あのハイキックと止まりそうな2Aが、身体の成長とともに激化してる気がする。
・ギルスのアメリカンミュージカルっぽさが可愛い。衣装もレトロ可愛い。アメリカ女子がああいうプロやってるの見るの好きだ。

男子シングル
・織田君に切符買ってくれたマダムはエリック見ていてくれたでしょうか。あなたが助けた少年(22歳だけど)良い演技したよ!
いや、本当にはまりプロだね!これは。SPとFSの演じ分けも完璧じゃないか。初見では「ステップ盛り上がらないんじゃ…?」と思ったけど、これは雲の中で散歩みたいな連続ジャンプでお客の心をぎゅ、と掴んだ上で有名曲での手拍子ステップだからいいんだな。お客のハートありきのプロ構成なんだな。畜生モロゾフ、伊達にモロゾフじゃないぜ!でもリンクサイドのお手振りは自重だぜ。運動会のパパじゃないんだぜ。相変わらず無駄に目立つ。
まあ、ステップはあんだけSPもFSもぐんぐん動かされれば、否応なくシーズン終盤にはこなれてきて音としっかり合うようになるんじゃないか。ただ表情は不満。もっとでーきるーだろー。特に最初は笑顔から始めて欲しい。あと、ジャンプ降りたら亜紀ちゃんばりににっこりするとか。もうアダムとかバトルみたいに「ボク可愛い!」と思い込んでいいよ。あるいは経営者やアルバンみたく「俺おもしれー!」と思うか。それが成立する日本男子は君だけだよ。君が目指すべきはそっち方面の俺様だ!
・トマシュのゴッドファーザーは想像以上に良かった。こちらもSPとFSの演じ分けが完璧。シリアス系なのに小芝居が映えるって、これもまたトマシュにしかできない路線。髪型も衣装もカッコイイ。ひたすらカッコイイ。どうした、衣装のセンスが良いトマシュなんて(酷)!
しかし…あれだけびゅりほーな4-3決めておいて、どうして後半バテるのか。おかげでトマシュの素敵なステップを堪能できないじゃないか!馬鹿!なんなんだろうねえ。もう織田君が体力の鬼みたいだったからねえ。稔も褒めてたし。このプロの完成版どっかで見れるのね!と思うと今からわくわくするけど。
・明らかに不調のジュベールさんお疲れ。でも、ジュベールさんのダイナミズムに似合った良いプロだと思うの。スタビスキーさんがキスクラで不良中年みたいな風体で座っていて、ああこの2人は東京ワールド制した同士だよなあと思った。なんとまあ感慨深い。男女は紆余曲折ありつつ雪辱五輪のリベンジを狙うポジに付き、ペアは結婚→電撃復帰し、アイスダンスは事件とかありつつキスクラへ。まあ、皆色々あった3年半だったね…。
・アダムのSPがガチで好みすぎたせいかFSはうーんとなってしまった。スピード感もなかったし。やっぱ彼はクラシックよりも映画音楽とかのが好きだなあ。
シンドラーチャップリンゴッドファーザーってすごくBS2っぽいラインナップ。
・セリョージャの半身はあれリストなの?なんか文字書いてあったけど。SPに比べると流れがなかったね、全体に。
・ぽんちゃんのジャズメドレーは好きなプロなのでまた見れて嬉しいです。ジャズやるならこれくらいのスピード感がないとねって思う。まあ、彼の場合はそれが制御しきれてないのが問題ですが。しかし、それなりにまとめたぽんちゃんの後で滑るとみんな遅く感じる。舞台あらし?

エキシ見たらユナ子はやっぱし踊り心がなかった(笑)いや、本当に。リアーナのビートに乗りきれてない!しかしリズム感が良くない子が007やガーシュウィンをあそこまで仕上げてくるって半端ないよなあ。そして織田君のオースティンは、彼の苦手な部分をたんまり詰め込んだプロだと再確認。彼、細かいマイムとステップが苦手なんだけど(せせこましくなってしまう)、オースティンってそれしかないんだよねー。モロゾフえげつないよ。真央嬢は本当にエキシの表情良くなったね…。もう少しだ。もう少しでこれが試合プロでも出せるようになりそうな気がする…予感。