ぶらり軽井沢の旅

唐突に「どこかへ行きたい」と思ったため、日帰りで軽井沢に行ってきました。東京駅から1時間ちょっとで着くので、千葉から藤沢の大学に通っていた友人の通学時間よりは短いはず(っていうか彼女は「独り暮らししなよ!」という皆の勧めにもかかわらず、4年間片道2時間以上かけて学校に通っていた。すごい根性。)
ちなみに軽井沢だったのは「行ったことがあると思い込んでいたけれど行っていなかった場所」だからです。というのも小学校の林間学校が北軽井沢だったので…私は「北軽井沢も軽井沢のうち」だと思っていたら、親に「北軽なんて軽井沢じゃないわ!浅間よ!嬬恋よ!」と言われたんデスヨ。そこまで言われたら東京人として、軽井沢行った方がいいって気になるじゃないですか。
そんなわけで朝7時過ぎに自宅を出て、現地についたのが9時過ぎ。所要時間、およそ2時間。電車の中でキリンジを聴きながら「虚栄の市」を読んでいたら到着です。
まずは前々から興味のあった「内村鑑三記念堂」へ。中軽井沢から徒歩25分くらいでしょうか。
生憎、今日は結婚式があるとのことで正面玄関へは回れず。黒髪を前髪ありのひっつめにした、いかにも清楚な雰囲気の職員の方に案内されつつ、まずは資料館へ。
内村鑑三キリスト教理念と言うのは非常に懐が深くて、なにがなんでもキリストを信じなさい!ではなく、どのような宗教を持っていても教会に祈りに来れるといった優しいもの。「無教会」の理念というらしいです。どんな神様も普通に受け入れてきた日本人には有りがたい教えだと思いました。私自身、特定の宗教は持たないわりに「人の祈り」に触れることが好きなので(新興宗教は基本的に受け付けないけれど、祈りが描いた宗教画やステンドグラス、五穀豊穣の感謝の祭りや踊り、モスクなどの建造物などは好きだ)こういうふうに言っていただくととても嬉しい。好きな宗教理念と言うと、レ・ミゼラブルのフィナーレの歌詞「誰かを愛することは神様のおそばにいることだ」っていうのもありますが。
礼拝堂はもちろん撮影禁止でしたが、バージンロードが2階からぐるっとまわって降りてくるみたいになっていた。ふたりが良き日を迎えるまでに歩んだ、決して平坦ではない道のりを忘れないようにとのこと。こういう、建造物にこめられたメッセージってロマンチだねえと思ったのでした。十字架がなかったのも、内村鑑三の理念を感じて少し幸せになった。昨日結婚された方(どなたか知らないが)にも祝福がありますように。
その後、軽井沢高原教会(こっちは若い人が好きそうな感じ)を抜けてセゾン現代美術館へ。あまりにもバスが来る時間が遅いので、庭だけ見てから歩いてシャトルバス乗り場へ行き、軽井沢駅へ戻ることに。バスを待ちながらジェラートを食べました。キャラメルと木苺。うまかった。ジェラートを買ってバス停へ向かったら、ものすごい量の人が並んでいてびっくり。シャトルバスなので、人数の関係上私まで乗車可でした。運が良かった。けれどこんなところで運使っていいの。
軽井沢駅に戻って自転車を借りる。地域あっせんの自転車は1500円と高いので迷っていたところ、駅のそばに小さな貸自転車屋さんを発見。終日700円のところを、もうお昼ということで500円に負けてくれました。いいひとだ。
チャリに乗ってとりあえず腹ごしらえに。ガイドブックに乗っていた雲場亭というお店へ。鶏がカリっとしてうまかったです。
お昼を食べながら眺めていた池が素敵だったので、周囲も散策してみる。親子連れ多いなあ…鴨も親子連れという様子です。水がとてもきれいな池で驚きました。水中がはっきり見えるんだもの。
それからも森の中をひたすら走る。自転車で走る。緑が多いのでチャリ走行には非常に気持ちがいいですが、ちょっと脇道に入ると別荘だらけで「どこなんだここは」状態に陥るありさまです。だって「鈴木さんの別荘」と「佐藤さんの別荘」じゃ道しるべにはならない。ホテルやレストランがあると場所がわかってほっとする感じです。いやあ、お金ってあるところにはあるんだねと別荘群を見ながら思いました。そして、二人乗り自転車ってあるところにはあるんだねとも。だって東京にいる限りではみないでしょ、二人乗りの自転車なんて。
その後、ちょっと足を延ばして旧三笠ホテルへ。なんせこの夏は北村薫ベッキーさんシリーズを読んだもので、あの本の時代背景を彷彿とさせるものには興味があります。元々好きだけどね、古い洋館。神戸の異人館街とか。まあ道すがら「このあたりを道子さん(主人公・英子さんの学友。日本人形のようなおっとりした顔立ちのわりにシニカルで自己評価が低く、気性の荒い馬を乗りこなす正真正銘の伯爵令嬢)がエルキュイユに乗って通ったのね!」みたいな気分だったことは否定しません(似非少女趣味的な意味で)。
旧三笠ホテルは戦前の西洋趣味情緒があふれる、ロマンチ空間でした。あの時代からトイレが水洗っていうのも凄い。そして調度の凝り具合も。しかし、この様子を見てから現在のホテルのスイートの豪奢さを思い起こすにつけ、人というのはだんだんに贅沢になっていくなあと感じるのでした。シンプルだけど凝った調度と涼やかな気候。それだけでも十分に贅沢だったはずなんだよね、と。写真はそんな調度品の一部です。奥方様やお嬢様がお茶を過ごされたよーな椅子とテーブル。
その後もショー記念堂で改めて宗教と自然について考えたり、ミカドコーヒーのモカソフト(絶品)を食したり、切符代をのぞくと5000円弱ほどしかお金がなかったためコンビニを探しまわったり(軽井沢は笑えるくらいコンビニが少ない)、地元の野菜を使ったという夕ご飯を食べたり、腸詰屋でソーセージを、ジャムのお店で砂糖不使用のジャムを、お土産屋さんで会社へのお土産を買ったりしながら20時過ぎの新幹線に乗り込み、22時前にはすでに自宅にいたという。
しかし私は休憩の取り方がとても下手です。一人旅だとせつにそう思います。もっとどうにかならんものかと。まあいっか、まだ若いから(一応)。人を誘ってスマートな旅行ができるような旅の達人に、いつかはなりたいものだ。