大学時代の先輩と会う

大学時代、姐さんと呼んで慕っていた先輩がコントをやるというので観に行った。居酒屋でショーライブ型コント。とても懐かしいエチュード形式で、半端なく上手な人から大学生のほうがましな人まで色々な技術の人が色々な芝居をやっていて、結果腹がよじれるほど爆笑しました。
私のいた大学はいわゆる金持ちの子女がものすごく集まる大学で、医者の娘や社長の息子が結構ごろごろいるところ、そして彼女の一族もほとんど医者・おじさまは高額納税者というセレブな環境。その中で芝居をやっている彼女は異端なのだけれど、異端をそのまま内包してしまう懐の深さがあるのが本当にお金のある人たちなのだと彼女を見るたびに思う。
たのしかったけれどどこか必死さのないコント集団でした。

そこには、某有名ミュージカル劇団員だった人ふたりと、某有名劇団員だったひとりもいたのですが(どちらも先輩)、最近某有名劇団をやめ郷里に帰った先輩――彼女にもまた非常にお世話になった――が疲れた顔をしていた。理由、聞けたら聞こうと思っていたのに聞けなかった。彼女はずっとその劇団に憧れていて、何度かオーディション落ちたけれど必死になって入って。しかも次に決まっていた公演は彼女が「大好き」と言っていた芝居の再演だった。それでも出て行ったのだから、それなりに理由なり覚悟なり、つらさがあったのだろうな。「もうやめた」と言う彼女のさっぱりした、けれど寂しそうな疲れた顔は、まるで大恋愛を自分から終わらせた人みたいで言葉を失ってしまった。
彼女は少なくともしばらくは、あんなに好きだったあの劇団のお芝居を「好き!」という気持ちじゃ見れないんだろう。何かを好きになるって難しい。そう思った。