生きていくのが辛いのではなく、辛くても生きるのだ

お久しぶりです。
いつの間にか世界選手権も終わりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
わたしはといえば、ブログに記事を書くどころではない状況が続いていて、結局ハイクのほうではいろいろとつぶやきながらもブログは放置!が続いていました。フィギュアスケートどころか、春先に観に行った「欲望という名の電車」も「国民の映画」もレビューを書けず。あ、両方ともちょう面白かったですよ。
そんなこんなで久しぶりのカンゲキロクです。
今日のかんげき→少年社中「天守物語」
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泉鏡花の「天守物語」を原案として、妖怪による天変地異を憎む人間と、人を殺めると鳥になる妖怪、そして嘗て人を殺した妖怪である鳥の因果と業が交じり合う物語。
これが本当に素晴らしかった。
話自体はかなり熱烈なラブストーリーとして進む。妖怪の富姫と鷹匠の姫川図書之介。生きる世界の違うふたりがどうしようもなく惹かれ合う。その中で人と妖怪が争い、ついには人間同士・妖怪同士の愚かな争いまでも起こり…という内容。物語がどんどん血みどろかつドロドロの愛憎劇になり、それに伴い血が滾るような熱さがいや増していくので、ラブストーリーは究極のヒューマンドラマなんだなあ…と感動しました。人間じゃない登場人物多かったけど。
人の妖怪に対する憎悪に「妖怪が天変地異を起こすから」という理由づけがされていて、「地震」という言葉が口にされるたびに非常にどきっとした。一方で、その被害を増長させているのが人間(権力者しかり、ひとりの小さな人間の臆病さしかり)だということにも、なんだかどきっとした。人間サイドの殿様は狂人として描かれているのだけど、どこか「このひとは正気だったんじゃないか」と思わせる部分もあったし、「こんなことまでして生きてどうするんだ」という問いと「生きるためにはどんなことだってする」という執念が問答のように繰り返されるのにはいろいろ考えさせられました。そして、物語は「生きる」ということにダイナミックに纏め上げられていくのだけど、その「祭り」感が凄まじかったです。「生きる」ということそのものに価値がある…というか、「まつる」べきものである、と思わせるような芝居で、ライブだからこそ味わえるという意味でも、こんな時だからこそリアリティがあるという意味でも観るべき舞台でした。12日まで。
ヒロインはあづみれいかさんという元ジェンヌの方でしたが、小劇場で宝塚出身の方を見ると本当にこの人たちはすごいなあと思ってしまいます。佇まいにまったく無駄がない。劇団員さんたちは、やはり「ロミオとジュリエット」をやって以降、なぜか声の出し方や滑舌がすごくよくなっていて、今回の難解な泉鏡花どおりの台詞がすごくきれいに聞こえて凄いなあと思いました。図書之介役の廿浦さん…もう、満を持しての主役!!という感じだったのですが、これが本当にかっこよかった。あの声の美しさは素晴らしいなあ。堀池さんもあんな役でしたが、堀池さんの素敵なところが余すところなく出ていて(ご本人はもうそろそろかっこいい役がやりたいらしいですが)180度回って男らしかった。そしてジェンヌさんの妹役をやっても負けてないえりさんが流石すぎました。満を持して廿浦さんが主役をやったことで、今度は満を持して未央さんの主役が見たいです。ああいう役も好きだけど。