四大陸と「南へ」を観てスケールとかメリハリについて考えた

四大陸選手権、終了。
特に女子FSの最終Gは素晴らしい試合だったと思います。荒川さんもすごかったと興奮気味でしたが、かなりアガった。何より、そのとき出来る限りのことをした選手が競い合って勝者が決まる、という試合にはなかなかお目にかかれないので、最終Gの6人のうち4人の選手がかなりいい出来(まあ、世界選手権に出るメンバーはこれから上げてくるでしょうが)だったのは、とても素晴らしかったと思う。
そして、いい出来で比較したときに、自分の好みっていうのが如実にわかって面白いなと思った。今回個人的に「おお!」となったのは、レイチェル・フラットのFSの終盤にものすごく盛り上がる感じで入るイナバウアーと、浅田真央が最後の最後に持ってきたスパイラル。レイチェル・フラットは緩急の人で、序盤からどっしどしストーリーを盛り込んでいって、ジャンプも終わって体力もきつくて、でももう少し見せ場が続くよ!というところにイナバウアーがぎゅーんと伸びるので、そのクライマックス感たるや半端ない。
浅田真央は(ここまで復活したからこそ言えることだけど)比較的ナチュラルかつプレーンな演技が持ち味の人で、わたしなんぞは華やかなものが好きなメリハリLOVERなので「もう一声!」とついつい思ってしまいがちだし、本人サイドもどうにかメリハリを持たせようとした結果が「鐘」や「仮面舞踏会」だったと思うのだけど、こういう優しく柔らかい、本人の個性に沿った曲で、こういう盛り上げ方もあるんだなーと思った。衣装がスタイルをカバーするように、プログラムも選手の個性をカバーし引き立たせるものであってほしい。
あ、真央嬢は今回のSPの衣装も結構良かったです。裾から覗く色味がきいてる。
ミライのSAYURIは結局のところ個性にあったプログラムに仕上がっていて衣装も素敵だったし、すごくいい集中力で滑っているのが観ていて気持ちよかった。ものにしかけたところで終わっちゃうのは残念なので、これ継続しないかなって思ってるんだけど、どうかしら。
安藤美姫の今季テーマは「スケール感」だと思うんだけど、それは継続することでどんどん積み上がってる気がする。何より、今まで演技中に「表情を作る」というと眉間に力の入ったものが多かったのだけど、普通の笑顔や目線を使った表情が増えてきていて、いい感じに肩の力が抜けているのかなと思った。

なお、わたしは四大陸の女子FSが行われているころ、池袋の東京芸術劇場にてNODA・MAPの「南へ」を観ていたのです。
野田秀樹の戯曲の根底には「罪とは何か」みたいなテーマが流れているのが多くて、今回もまた「罪とは何か」系だったのですが、ここ最近の「ザ・ダイバー」や「ザ・キャラクター」が1エピソードを中心に構築されていてわかりやすかったのに対し、「南へ」はどんどんあらすじやストーリーがわからなくなっていくタイプの難解な演劇で、「わからないわけじゃないんだけど誰にも説明できない」という作品だった。
そういう難しい芝居で、俳優たちは野田秀樹的な言葉遊びをものすごいテンションで叫ばなくてはならず、特に嘘を叫び続けなくてはいけない役どころの蒼井優は「うまいんだけど聞いてるこっちが辛いくらい煩い」ということになっていて、今までどの作品(映像)を観ても安定してうまい女優だっただけにびっくりした。それほど野田作品って難しいんだと再確認したというか。
あと、主演の妻夫木聡がものすごく舞台向きな俳優だとわかって、それにもいいびっくりだった。線が細い好青年というイメージの彼だけど、舞台で見るとけっこう「ちょうどいい」体格をしているし、何より声がよく通って無理なく出ているので、聞いているこっちが安心できる。演技全体としても、あれほどのことをやりながら基本的には肩に力が入っていないし、とても丁寧だった。失礼ながら「好青年のイメージで苦労してるタイプ」だと思っていたのだけど、そんなことは全然なくて、むしろ「うまいからこそ好青年を求められ続けていた」のかなーと思ったのでした。「悪人」や「南へ」の演技からまたスケールの大きい作品に恵まれて、大河リベンジを果たしてほしいものです。

そんなこんなで、芝居を観て、家に帰ってから四大陸を観ながら、メリハリって小手先の技術じゃなくて、自分のスケールの大きさを信じて肩の力を抜き、できることを丁寧にやっていくことに他ならないんじゃないかなと思いました。わたし自身もかくありたいものです。

普段ならもっとメリハリのある演技をする鈴木明子がいまいち乗り切れていなかったことや、スケールの大きい端正さが持ち味のミリアン・サムソンが怪我でイマイチな出来だったことは非常に残念です。特にワールドを控えているサムソンは、ちゃんと治して、今回も素敵だったファヌフと共にカナダの雄大さを見せつけてほしいものだ。

おわり。

カップ・オブ・チャイナはまだ途中なんですが

こういうのは生ものだから早めに書かないと。追記は気分次第だね。お久しぶりの地上波放送でした。
しかし地上波放送を久しぶりに観たら、しゅーぞーと競技の乖離がものすごいことになっていて寧ろ驚いた。まあ、実況も今回はあまり良くなかったんだけど、特に叫んだりしないだけ脳内スルーが可能だったので、「BSやCSで可能な限り淡々と放映する」という基本があって、それを地上波ナイズした結果があれだと思えば納得がいくような。しかしそのためだけにしゅーぞーの相手をする静香さまは大変だなと思ったのでした。美しかったけど。
番組編成のひどさについては色んな人が触れているので割愛するけど、テレ朝はもうちょっと刑事ドラマと金曜ナイトドラマ以外も頑張ってほしいものだ。

女子
・自爆三姉妹がいきなり優勝×3でどうすればいいですか祝えばいいですかという安藤さん優勝。正直、去年よりもいろいろなことが上手くかみ合っている感じ。滑り込みや解釈はまだまだ足りてない気がするけれど、方向性は定まっているから特に問題ないと思います。SPの3-3はちょっと…厳しいなあと思わないでもなかったけど、FSにおける「クリーンな3-2」と「一見クリーンなようでUR取られた3-3」で比較したとき、3-3に挑戦する意味がちゃんとあるってわかっただけでも収穫だし。SPはわたしも止まりすぎだと思った。時間を考えれば決めポーズは1回でいいし、ステップもなんか効率悪そう。しかしSPでの取りこぼしをFSですぐに修正できているところを見ると、競技に対してポジティブなんだろうなということが伺えるので、今後の滑り込みがとても楽しみです。ちなみにFSはかなりいいプログラムだと思ってるよ。
・得意路線が決まっているようで幅が広い=「これぞ鈴木明子!」というプログラムがいろんな方向であるのがあっこちゃんの強みだなと再確認した今回。FSはとうとうPCSトップです。やったね!項目ごとの美姫ちゃんとの差や勝敗は、なんとなくジャッジの気持ちがわかって面白い。彼女もまだ滑り込んではいない感じなので、プログラム自体の今後の成長が期待できそう。屋根の上のヴァイオリン弾きの野性味というか地に足のついた感じが好きだ。
レオノワたん路線開拓中なう!SPもFSも出てきた瞬間衣装に度肝を抜かれたよ!でも似合ってたからオッケー!両方とも個性的かつドラマティックな音楽なんだけど、去年に比べると荒削りさが抜けてきたというか、シニアっぽさが板についてきたなあという印象。昨シーズン終盤あたりは「このプログラム似合わなくなった」と思っていたのですが、指導陣もそう思っていて、ちゃんと大人っぽさとアリョーナのチャーミングさが共存するプログラムをつくってきたあたり、選手への愛情と信頼の深さを感じます。ただ、もうちっとメイクは薄いほうが可愛いんじゃないかと思った。美姫優勝の瞬間ハグしてたのは文句なしに可愛かった。
疲労骨折明けということもあったのでミライのFSの失速はぶっちゃけ予想内だったのですが、ビールマンのポジションなんかを見てると、ミライも体形変化にさしかかってるのかなあと思ったり。それでもやっぱり基礎のしっかりしてる選手だから、はまれば一気に次世代トップの座を奪いそう…ということは、ここ3戦に出てきたアメリカの選手全員に対して思っていることだったりするんだけど。SAYURIは気丈な感じがゆかりんver.を彷彿とさせるものの、チェアマンズ・ワルツが思い切りBGMになっちゃってたのはどうかと思った。もうちょっとこのへんのたゆたうような感じを大事に表現できると、和…というかアジアンな情緒が出てきていいんじゃないかと思います。
・なるみがシングルにいる!あるいは体操の鶴見さんが氷上にいる!と思ったら去年も出ていたビンワちゃんがいい演技で上位に。コーチはチェンジャン。いい空気や個性を持ってるわりに上位にいけない感のあった中国女子ですが、名前に「氷」も入ってることだし頑張ってほしいものだ。
・ミンジョンがあまり折れそうじゃなくなってた。いいことだ。今回はあまりいい成績じゃなかったけど、オフにいろいろあったみたいだし仕方ないでしょう。がんば。
・アマンダはレイチェルとは違った意味で往年の大女優風を極めてほしいと思います。長手袋素敵よ!
・ヨシちゃんのSPは思いっきり「サラバンド」じゃね?Magayaじゃなくね?お姉さんより妹のほうが大味な感じだなー、この姉妹。

男子
・小塚君に対してのほうぼうのコメントで、思い切りがほしいとか表情がどうとか言われるようになったってことは、それ以外が良かったってことですよ!大いなる進歩だと思います。だいたい「頑張ったね」といわれるうちはまだ「頑張るだけで精一杯だろお前」と評価されてるってことで、みんな「こんなにできるんだから、もっとやれるだろ!」って思うからこそ「もっと表情」とか言ってくるんじゃないか。そんなわけで、小塚君が照れずにカメラアッピール出来るようになる日まで、照れくさそうに見守ろうと思います。…ってそこで見てる側が照れたらだめじゃん。SPの衣装はベスト脱いだほうがいいと思う。なんかわちゃわちゃした感じになっていた。
あと、優勝決まった瞬間、信夫先生のほうからハグしていたのにはちょっと泣きそうになった。いいもん見た。
・銀のムロズさんを地上波がスルー事件…な、なんだってー!今夜録画を見ます。
・4を跳ぶとか跳ばないじゃなくて、トマシュの演技をそれなりの形で久しぶりに保存できそうで何よりです…欲を言えばきりがないんだけど、昨シーズンはなんせ欲を言ってる場合じゃなかっただけに。あ、あと「雨に唄えば」はいいプログラムだと思う。欲を言えばSP・FSどちらかは重厚路線で言ってほしいんだけど。でもなんせ欲を(以下略)
ジュベールさんの第九はもっとこう、乗ってくると違うのかもしれないなあと思うので評価は保留。今回は衣装含めて噛み合ってない感じが強かった。衣装含めて(大事なことなので2回言った)SPはね、あれでいいと思うよ!めちゃくちゃ面白かったけど!でも面白くなければジュベール先輩じゃないよね!
・町田君は堂々たるデビューだったと思います。滑りや動きの形が綺麗で粘りがある。特に「黒い瞳」のステップは絵になるポジションが多くて眼福でした。こんなに上手い選手が出てくるなんて、本気で枠が足りない。どうしよう。
モロゾフプロデュースのヴォロノフはかなりいい男でした。今までの「オレどうすればいいの」みたいなところがモロゾフ特有のねっとりした感じでうまくカバーできていて、いいロクサーヌだったと思います。ああいうロクサーヌなら白シャツ&髪をおろして青年っぽさを出しても間が持つと思うんだけど。FSは棄権。どうやら膝を痛めたらしくてちょう心配です。せっかくいい雰囲気が出てきたのに。
・コンテスティのSPのタキシードが素敵過ぎてどうしようかと思った。まゆげのイメージが強かったけど、普通にイケメンだった。プログラムも可愛い面白くて素敵過ぎた。もう彼くらいの年齢になると、どうにか長いこと滑り続けてほしいなと思ってしまう。
・ロス・マイナー君は今回もまあまあいい演技でしたが、どうにか「アメリカ系量産型」のイメージから脱却してほしいところ。ひとつひとつは「ああ、うまいな」と思うんだけど、ホクスタインとかあのへんとの差別化をどうにか。
・ちうごく勢はどうにかスケーティングを強化してほしい。けっこういい選手がいるだけに。
・SPで「黄河」を滑った選手の衣装がばりばりプリンとかチョコバナナだった件。


安藤さんや小塚君がわざわざ日中関係のことについて記者会見で触れていたこととか、NHK杯でのパントンのコメントは、もっと取り上げられていいと思う。彼らはスポーツ選手の影響力に自覚的で、だからこそ「敢えて」公式の場で発言をしているんだから、こういう言葉は大事にしてほしいなあと思った。
変に政治的に利用されるのは良くないけど、国際交流という意味では色んな芸能人さんより遥かに「現場にいる人」たちなんだし、敢えて若い彼らが(批判されるかもしれないことをある程度わかった上で)発言しているということを、もっと真剣に取り上げてほしいものです。アイドルじゃあないって、そういうことなのよ。

ものすごく今更感のあるスケカナ感想

NHK杯男子FSの感想を書かないままスケカナが終わってしまいました…。そしてスケカナを書かないままカップ・オブ・チャイナが…
先々週は観ているドラマがどれもER以外は個人的にしょんぼり展開で、こんな気持ちのまま11月第1週は相棒もSPECも放送ないのかよ!そりゃないぜベイベーとか思っていたらスケカナが超楽しかったっていう。BS朝日での放映のテンションも低めで、新藤さんも森下さんもだんだんマニアックになってきて、稔も楽しそうだしいい試合でした。こういうテンションで観られるならもう別に地上波とかいらないよねと思いました。どうせそんなに視聴率とれないでしょ、誰が出ても(暴言)
以下、なんだか時期を逃してしまった気がするので覚書。
男子
・パトリックは半端なく面白かった。とりあえず「パトリックが4回転跳んだらどうなるのか」っていうのがわかったというのは大きい。4回転跳んでもステップのほうが凄かったっていうのが証明されたんで、いいんじゃないでしょうか。しかし綺麗なクワドだった。パトリックは3Aも4も、ゆったりと大きくて素敵だよね。そして片足ステップとかコレオステップとかがお手本のようでまた笑った。FSの暴走ファントムの凄まじいこと!ラウルなにそれおいしいの?っていうファントムっぷり。すごいねえ。俺様だねえ。かっこいいねえ!まあ、PCSはジャッジがテンションあげすぎた気がしますが。笑。先週は高橋君でテンション上げすぎたわけで。なんていうかご馳走様でした。テイクファイブの完成形を保存したいのでぜひ次の試合でやってください。
・SPもFSも表情が硬かったのが気になる織田パパ。が、意欲的にいろいろやってるのはいい傾向かなあ。わたし何故このレベルの選手がこうまで緊張が顔に出てしまうのかよくわかってないんだけども。去年は「それでもなんとか繕おう」みたいなのが前面に見えたけど、それを敢えてやってないような気がしたので、もしかするとコーチに「とにかく自然体で臨みなさい」みたいなアドバイスを受けているのかも、と思ったりして。プログラムは両方ともいいと思います。衣装も合ってると思うし。序盤から飛ばしすぎると途中でだれてしまうタイプなので、これくらいのスタートのほうがいいのかもなあ。ナチュラルにわくわくするような空気が出てくるとなおよろしいんじゃないかと。
まあ、五輪とトリノワールドを思えば、よく引きずらずにやれてるなと感心せざるを得ないのですけどね。日本っ子はたくましいの多いから気づかれないけど、しばらく立ち直れないという事態もあり得るレベルの事件だったと思うので。
・両手を挙げるタノルッツが本気で危なげねえ。笑!いやもう、独自の世界もちゃんと構築してるし、まだ3Aがたまに危ないけどそんなに言うほどでもなくなってるし、トップランク選手の仲間入りを果たしたと言って過言ではないんじゃないか。
ていうか本気で全米メダル獲るつもりだねー、リッポンは。ライサもジョニーも不在の今、アボットとガチで戦う気満々。ルックスを含めて自分のキャラクターを把握してるひとは好きですよ。ルックスって一番シンプルかつわかりやすい個性だもの。完成度重視型の若手のお手本のような演技だったと思います。
ただ両方王子様路線だとちょっと飽きるので、リッポンの生来の気の強さを活かしたプログラムも観たいと切実に思ってみたり。来季はどっちかシェイリーンに作ってもらってはいかがでしょう。
・ぼくらのケビン・レイノルズことチャッキーは(逆だ)、4Tも4Sもあまり危なげなく入ったことも素晴らしかったのですが、それよりも全体の技術向上がようやく認められてきたことが嬉しい。なかなか点数に反映されないままだったから、ようやくか!と思って。ジャンプ自体にも高さや流れが出てきたので、加点がっつり…とまではいかないけど、それなりに評価されやすくなったんじゃないかな。SPもFSもいいプログラムだし、なんといっても表情が活き活きとしていて、観ているこっちが幸せになるような演技でした。シュトラウスメドレーのハッピハッピー感とか凄かったじゃない!もうジャンプだけの選手とか誰にも言わせないよね!
・やってることも衣装も(ここ大事)面白いんだけど、まだそれに内容が付いていってないというか、極端な言い方をしてしまえばまだまだ「出落ち」なハビエル。周囲が良すぎたってのもあるし、そもそもあんな衣装とかあんなプログラムとかで「入れる」っていうのは他にない個性なので、アモディオ共々、コーチのカラーを打ち破って自分の色で塗りたくるくらいのつもりで頑張ってほしいものだ。ていうか、それができると思ったからこそこんだけ濃いプロを用意したんだろうしね。そのへん北米系とはアプローチが違って面白い。しかしまあ未成年なのにプログラム中に飲酒するわ喫煙するわ。笑。
・今年も続けてくれるというのがうれしいわ!また逢えたわ!なプレオベール先輩。ジャンプの軸とか姿勢とか、地味に年々良くなっている気がします。特にFSは、解説にまで「途中で面白くなるんじゃないか」とか言われてましたが、きちっとした端正なプログラムで、それがまた嵌っていて、個性的なファッションが魅力の彼が細身ダークカラーのスーツをきちっと着こなしたみたいな素敵さがありました。だからもうちょっとPCSくれへんか。好きだ!

女子
・わたしたちのシズニーが素晴らしい演技で優勝!やった!彼女はけっこうラテンなのやエキゾチック系もいけるので、SPもFSもうっとり路線っていうのはさみしい気がしてしまうのですが、どっちも素敵だから特に問題はない。唯一の問題はSPのスカートの薄さってくらいで。丁寧に自分のできることをやっていけば、おのずと素晴らしい演技がついてくると本人が信じ始めたようないい演技でした。
マカロワはSPもFSも本人の美しさを活かしたプログラムで、非常にいいと思います。可愛いポニテだし。大人っぽくていい。ただFSは…コルピといいどうして終盤で「ハロー!ブエノスアイレス」を使うんだろう…エビータとチェのワルツとか、なんかいろいろあると思うんだ…微妙にプログラム自体に納得がいってない。
ラコステ、サムソン、ファヌフとカナダ女子が非常に眼福でした。主に背中がかっこよかった。特に気に入ったのはラコステのシェヘラザードかなあ。一緒に物語の世界へ冒険に出かけたくなるような頼もしい美女っぷり。ファヌフのSPも自信に充ち溢れていて非常に魅力的でした。演技終了の笑顔のまぶしさに思わず「イケメン!」と叫んだ。サムソンも若いわりに個性的かつ魅力的で、女子では難しいクイーンを非常によく表現していて素敵でした。カナダ女子いいなあ。素敵すなあ。
・ヴァルの演技後の様子に関西弁でアテレコするとちょうはまる。「あかんわー、あたし空回ってしもたー!」みたいに。モロゾフが若干押され気味なのが面白かった。レクイエム・フォー・ドリームは文句なしに本人にはまっていて黒手袋も悪い妖精みたいでかっこいいし、かと思えば「こうもり」は文句なしに可愛くて、うまく評価をあげていければ中堅のスターになれそう。大好きな選手なので、ちゃんと放送される位置にいつもいてくれるとわたしが喜ぶ。可愛いし、押しが強そうだし、ラテン娘だし。
・静香さまが「体力が…」と言った瞬間2A〜2Aを成功させる村主さんに萌え。その影台詞として
「フミエさん…思い出す。あたしたちが戦っていたソルトレイクの日々。比べてはいけないことはわかってる。でも…あなた、あの頃こんなもんじゃなかった!!」
「御覧なさい、シズカ。わたし、まだまだやれてよ!」
という、ガラかめ的な何かを想像すると滾る。もちろん、どうでもいいことなので一度しか言いません。
FSの衣装はもうちょっとオーソドックスなもののほうが、村主さんの持ってるオーソドックスさが活きていいと思った。あと、プログラムが意欲的なわりに細かすぎて伝わってない感じなので、そこも気になった。
・思い切りSPとFSの曲を逆で紹介されてたラフェンテですが、彼女もまたスターの素質を感じさせる演技。SPのハプニングはちょっとかわいそうだったけど衣装も素敵でプログラムもいい感じだったし、FSはなにより女子でレミゼ!っていうのが嬉しい。レミゼ好きとしては「オン・マイ・オウン」がBGM化していたのは残念だったけど、衣装のイメージと編曲にはそれなりに納得。

まだ全部見終わってないけど、地上波分だけでもカップ・オブ・チャイナは早めにあげます。これだからGPSは!

NHK杯・2日目

いやはや。一日中テレビの前に陣取っているのはなかなかに辛いものですねー、好きでやってるし面白いけど。皆様のお目目はいかがですか。わたしは疲れ目です。さて、男子SP→アイスダンスFD→ペアFS→女子FSの怒涛の展開、ジャッジの皆様やコーチ陣、もちろん選手の方々も大変だったと思いますが、簡単に印象に残ったところだけ。

男子SP
・明確に空気が変わったのはアモディオの変態ステップからだったような。無良くんの4-3は素敵だったしウー君もいい演技だったけど、まだ本調子じゃなかった。でもアモディオはなんか漲ってた。今までの洒脱なアモディオとはちょっと違うけど、いい感じでコーチの課題についてってる感じ。これで自分の色を入れていけると相当すごいことになりそう。先生の課題に対してきちっと答えた上でプラスオンしていける生徒だと、モロ先生んとこには合う(いるときは得るものがあるし、離れてもその学びの姿勢自体は有意義)だと思いますよ。しかしステップの凄まじい速さは寧ろ笑えた。
・羽生君は物おじしてなかったねー。あれだけ自分の空気感のあるひとの後で滑って、自分らしさを提示できるのが凄い。しかも自分らしさが若さゆえの頑なさではなく、色々と分析してそうなのが凄い。プルシェンコとかジョニーとか、いろんな先輩スケーターの影響で語られることの多い彼ですが、羽生結弦羽生結弦みたいになればいいよ、と思った。
・わたしたちのソーヤーがとったな!要素が減ったおかげでアサシンズ・タンゴが一層タンゴっぽさを増して帰ってきた!衣装も素敵!そしてスピンも明らかに上手くなっている。ランビエール級とまではいかないものの、軸が幻視できるレベルで回転が鋭くて楽しかったです。3Aについては仕様です。
・ハイク上で物凄い勢いで「シュルタイスが」「イケメンになった」「普通にかっこいい」というコメントが流れたくだりは笑えました。きっとtwitter上とか巨大掲示板上でも似たような流れだったんじゃないかと推察します。滑りだしたらシュルタイスでしたが、ちょっと前までは1プロ滑り終ると頭皮まで真っ赤になるくらいスタミナがなかった彼だと思うと感慨深いものがありますね。独特だったけど今までよりは大衆受けも考えているという、個性派シンガーソングライターが売れるために計算し始めた時期の意欲作みたいなプロでした。FSのロミジュリが色んな意味で楽しみです。
デニス・テン君の衣装がライサチェックみたいになったな…フランク先生だしな…と思っていたら振付はランビエールだったでござるの巻。しかし高橋「アメリ」のときに散々「あいつは自分みたいなプロしか作れないのか」と言われていたけれど、ランビエールがやればできる男だったのか、あるいはデニスの自分らしさが凄いのか。いっぱしの男のようなキレとすっきりした味わいのあるタンゴで斬新でした。このプロが1年間見れると思うとわくわくします。
・高橋君は入ってから出ていくまで本格的にスター様。プログラム自体もキレててよかったのですが「みんな、俺のこと好きだろ?…知ってる」みたいなオーラが凄くて、いいスケーターはいっぱいいるけどそういうスケーターは一握りなので、本格的にわーっと思いました。高橋君観てるとあの場に行ってコマされたくなるね。思う存分「愛してまーす!」と言ってやるわよ、みたいな。
・その高橋ワンマンショーの後にがらっと男の色気プロを滑ったアボットのかっこよさについて述べたい。新生アボットは抱かれたい男ナンバーワンって感じでセクスィーです。あんなツイートをする男があんなにかっこいいわけないっていうくらい。衣装もちょっと変わってて好みです。ちょっとジャンプがいつにもまして低空だった気がしますが、全体の雰囲気は良かったし、強くなったなあという印象。スピンのノーカンさえなければ高橋君ともっと近づけたのに…っていう。


アイスンダンスFD
・月光をやった中国のカップルと、メドレーだったチェコカップルの編曲がめっためたで凄かった。伝説のロクサランフェスを彷彿とさせてそれよりも破壊力強め、みたいな。あれはいいんですか!ダンシングなんですか!や、チェコカップルは好き放題踊れる感じの曲のパッケージだったけど。
・イギリスのカップルの「ライオンキング」、男性の衣装がうり坊みたいなことになっていたのですが、それ以上に面白かったのが最後の規定外リフト〜フィニッシュまでの流れの中で「女性が男性の膝に足をかけ、何かを持ってる風に両腕を伸ばす」という動きがあったことです。あれは絶対にライオンキングのオープニングとラストシーンに出てくる、ライオンの王様が自分の子ライオンを動物たちにお披露目するシーンからインスパイアされている。面白いなと思っていたらプラトフ先生んとこのカップルだった。なるほどねー。
・リードさんちは非常に雰囲気のいいプロでした。本人たちも「もうちょっとはずんでや」と思ってるみたいですが、こっちもチェコ組よりは…うーん、という気分に。たぶん細かいミスが響いたんじゃないかなと思いますが、うっとり系で滋味あふれるいいプロなので、more practiceでがんばってほしいものだ。
ボールルームダンスみたいで凄かったシブタニズ。ここの組は妹もだけど、お兄ちゃんの動きがいちいち決まってて本当に素敵。いつもぴんっと背筋が伸びていて、ちょっと首を切るだけみたいな動きが綺麗なことがかなりいい方向に働いている。ステップの最後の方でカーブしながらクイっと首をこちらに向けた所作がとても素敵で、ああいうのみんな真似すればいいのに!と思った。ぱあっと華やかになるような演技で表彰台。おめでとう!そしてオフアイスだと同じ顔に見える。表情が似てるんだな。
カッペリーニちゃんの調子が途中から明らかに噛み合わなくなっていて心配です。ここのカップルはイタリアなのに睨み合わないよね…。いや、睨み合えとは言わないけど。ふたりとも衣装も演技ももうちょっと華やかさプラスオンしていいと思うの。
・イリニフたんのスカート可愛い。シブタニズがボールルームなら、彼らはオンステージといったドン・キでした。さすがおろしあ。こっち方面の正統派ならおまかせあれ!といったカップルは1組いると華やいでいいよね。
フィギュアスケートムーランルージュは結構使われますが、これが一番好きかも知れないと思ったウィーバー・ポジェ組。「スパークリング・ダイヤモンズ→カム・ワット・メイ→ロクサーヌ」という流れなので「駆け引き→熱愛→不信」という感じなのかしら。終始ケイトリンが美人に見えたのが成長の証しだと思います。
・メリチャリってどんどんと上手くなるなあ。チャーリーのひげは自分的にあまり好みでないのですが、ファニーフェイスの坊やに見えないという意味では成功してるかも。何割増しかで大人びたカップルに見えました。プログラムも今までのような力技感ではなく、きっちりと手駒を磨いたうえで出していこうという方向っぽい。シーズン初めなので多少荒削りでしたが、さすがの貫録でした。そしてメリルの声は今日も可愛かった。ありがとー。


ペアFS
・このへんになるとだんだん観てるのがしんどくなってくる。だって終始画面が…白い…
・ヤナコフのアヴェマリアは素晴らしいプログラムで心洗われるようでした。うっとり。でもうっとりしすぎて眠気が…
・密かに応援しているボロデュール・マタトール組ですが、直前の日程になったそうであまり本調子ではなさそうでしたね。このふたりの醸し出すほのぼの感がもっと全体に行きわたると、みんなが笑顔になれるプロが出来上がりそうです。
デニー・バレット組のスピード感あふれるスポーティーな魅力に「ラプソディー・イン・ブルー」はぴったりだと思ったし楽しかったんだけど、点が伸びなかったなあ。去年は最終でれなちゃんたち・ゆうこちゃんたち・パントンという、ペアの中でも日本で人気の高い人たちに混じっての滑走だったことを思い出しました。相性悪いとか思わないでまた来てね!
・「普段から大人っぽくするよう心がけている」らしい成美ちゃん。具体的に何をしているんだと突っ込みたいところですが、確かに普段からちゃんとお化粧したり、ヒール履いて学校行くだけでもだいぶ心構えは違ってきますからね。氷上での色っぽさは格段に増してるし。さすがに緊張していたのかジャンプに堅さが見受けられましたが、リフトやスパイラルのポジションの美しさがぐっと向上して、すっかりシニアで見劣りしない風になっていました。トラン君も順調に男前に育っている。表彰台おめでとう!日本での報道も増えてほしいし、どうにか日本代表として五輪に出られるようになってほしいなあ。演技前のげんこつこっつんこの可愛さは反則です。そして10代日本選手の中で最速で流し目を取得したのは成美ちゃんでしたね。
・五輪で観たときに「いい雰囲気だな」と思ったバザロワたちが、さらに上手くなっていたなあと。このふたりがこんなふうになったなら、ロシアも安泰じゃないの?表現もいいし技術も申し分ないし、あとは相性と女の子の身長か…とここまで考えて去年のNHK杯を思い出しました。すっかり背が伸びたクラシルニコワがとても大変そうだったからな…。今はまだ少女体型なバザロワたんですが、彼女の演技はとてもいいので、あまり辛くない成長をしてくれればいいなと思って祈ってます。
・大人の愛というかエロスというか、エロス込みの愛というか、最終的にはうっとり増量・はみ出でお届けされそうなパントン「愛の夢」。なんか凄かったねえ…。倦怠期の夫婦とか恋人同士は、このプログラムを腰を落ち着けてゆっくり観てみてはどうだろう。ラストの見つめあうふたりの空気そのままに、大事な人と見つめあってみてはどうだろう…何言ってるんだろうわたし…。駄目だ、まだシーズン序盤だしジャンプも微妙に不調そうだったのに、思い出しうっとりしてしまう。パントン恐るべし。優勝おめでとう。


女子FS
・浅田さんの調整は本当に抜本的らしくて、ゆっくり焦らずやってってほしい感じ。たとい「途中なんだ」と本人が思っていても、やはり他人に順位をつけられることはしんどいだろうし、たくさんの目が内包する期待にこたえられないことは辛いだろう。こういう風になってる状態で試合に出ることはある意味大変なことで、試合自体・負け自体に対する葛藤が生まれてしまう場合もある。だからこそ今まで以上に「出るのか・出ないのか」「挑戦するのか・とにかくいい印象で滑り切るのか」など色々なことを冷静に、先生と話し合って決めていってほしいなと思います。大丈夫、あなたはひとりじゃない。
・ジェナのFSはちょっと…ちょっとでしたね…。そういえばBShiでやってくれたSPは良かったよ…。わたしはジェナの「どうよ!」が見れるとけっこう幸せになるタイプなので、がんばってほしい。
・キャロラインは体調管理が大変な時期に差し掛かった模様なのに、ジャンプ自体はけっこう修正されてるところが本当に素晴らしいので、あまり根を詰めすぎずに表現を追求していってねと思う。がんば!
・コルピにエビータとか超はまり役なのですが、ちょーっと固かったかな。ミュージカル好きとしては「ハロー!ブエノスアイレス」でのステップというのが気になりました。エビータなら「空をゆく」が好きなのでどっかに入れてほしかった。しかしこれ、ノーミスいけたら皆コルピ信者になってしまいそう。
・ジャンプが崩れてもスピンなんかは崩さないアシュリーが、後半色々とグダってしまったことに体調面での心配をしてしまいます。大丈夫かしら。マラゲーニャは目千両を活かすギラギラした印象と、動きのシャープな色っぽさが両方味わえるいいプログラムだと思うので、ぜひウェルカム東京。
・芝居好きとしてはたまらないレイチェルさんのプログラム。小芝居が全体の印象を崩さずに入ってるし、常に演技してる&演技自体がとっても楽しそうだから幸せになります。すごい女優だなあ。大学入ってもどうにか両立してほしいもんだ。
・シニアデビューはそないに甘いもんやおまへんで、というディダクション3になっちまった佳菜子ちゃんでしたが、終始一生懸命だったのが良かったと思います。ステップ、疲れてたんだろうけどちゃんと剣術風の動きを守ろうとしてるところに、このプログラムを好きな気持ちが伝わってきました。好きなものを好き!と表現する強さ、いっぱい練習したのに悔しい!と言い切る強さで次もがんば。表彰台おめでとう。
・なんとなく歪な構成でしたが「戻りたくない場所」というのが結構具体的にありそうなカロリーナさんにとっては、いい一歩になった試合じゃないかなと思います。とても可憐で伸びやかな「牧神の午後への前奏曲」でした。自分は大丈夫だと信じることこそが、カロリーナさんの道を作っていくとわたしは思っているので、またあの笑顔を見せてよと心から思う。そしてヴァルと一緒にウェルカム東京。優勝おめでとう。


…書けなかった選手の皆さんごめんなさい…では、また明日も楽しみましょう…(バタッ)

NHK杯はじまりましたね

平日はもちろんお仕事なので、ペアとダンスは録画して女子SPだけ観ましたよ。
何しろ女子は人気・注目競技なのでBShiではなく地上波生放送してくれるんですよねえ。ただ、皆様のNHKなのでニュースとの兼ね合いもあって下位選手は地上波の隙間にボッシュートされてしまふわけです。そんなわけで今年も愛しのジェナ・マコーケルとかヴィクトリア・ヘルゲソンが飛ばされました。他の選手の点の出方を見ると、ジェナはジェナ比で素晴らしい演技だったんじゃないかと思しき点数なので悔しいです。とりあえず2Aがかっこよかったという予想をしておきます。では、観た人の感想を。

アシュリー・ワグナー「ワンス・アポン・ナ・タイム・イン・アメリカ
昨シーズンと同じプログラムですが衣装を変えてきました。赤だし、ちょっとフェミニンな印象になったかも。ずっと左足で滑っていくシークエンスが挑戦的で素晴らしかったです。相変わらず、この人の演技が好きだなあと思いました。表情も豊かだし。ちょっと絞れてないかな?という印象も受けましたが、重そうというほどではなく。ちょっとしたミスに引きずられて焦ってしまう癖はだいぶ良くなっているようです。ちょっと前まではポニーテールぶんぶんだったあの子がすっかり素敵なレディで、そう言った意味でも見ごたえがありました。メイクも上手だし。ちょっと鼻たて多めだったけどね。しかしフィギュアほどメイク傾向が選手によって違う競技も珍しいよな。舞台化粧ベースと日常おめかし化粧ベースに分類できそう。

村上佳菜子「ジャンピング・ジャック」
ニュープリンセス誕生に相応しい元気な演技。衣装はなんかシニアデビューに際して気合を入れ過ぎてしまった感じの山田組カラーでしたが、全体的な雰囲気や表現したいことにはマッチしていた気がします。ぴょんぴょん飛び跳ねて怖いもの知らずの、まさに「正しいシニアデビュー」を絵にかいたようでした。この空気であれだけ表現できるっていうのは凄いよね。SP2位かつ先輩がちょっと落としてしまったので周囲ががやつきそうですが、あまり気にせずがんばってもらいたい。ここでどんな結果であっても、それはただのファーストステップなのだからね。

エレーネ・ゲデバニシビリ「セル・ブロック・タンゴ」
大好きな映画の大好きな曲で、しかも大好きな選手ときたら楽しみにせざるを得なかったのですが、ちょっと不発。プログラムは悪くないんだけどこの曲ってやっぱり歌ありきなので、たといダサくなっても全体にメロディをなぞる楽器が入ってた方がいいような気がした。ルックスと衣装と曲は合ってるんだけど、タンゴっぽいキレはもっとどうにかできそうだし。ジャンプミスが響いて、FSは地上波の隙間にボッシュートされそうな位置に。やーん。

キャロライン・ジャンリベルタンゴ
そういや地上波放送された人のうち3人がタンゴだったのねえ。一番タンゴらしさが出ていたのはキャロラインだった気がします。2Aは相変わらず苦手そうかつ止まりそうですが、直前にぐにゃっと沈み込む癖が改善されていたのが見て取れました。スピンは相変わらず眼福だし、曲芸っぽさもなくなってきたし、なのにまだもう一歩抜け出せませんねえ。どうしたものやら。

レイチェル・フラットサマータイムほか」
女社長っぷり健在。いい意味で貫録増してる。レイチェルのリズムの取り方は非常に粘りやためがあって、佳菜子ちゃんのダンスがあっさりしているのとは傾向がかなり違っていて素敵でした。佳菜子ちゃんがフルーツならレイチェルは肉料理って感じでがつんとくる。「踊ってたねー」じゃなくて「こういう動きがあった」という印象に残るタイプの女子ならレイチェル・フラット鈴木明子かって感じなので、今季ダンスプロをやる人たちは身近なお手本ということで見習うといいと思うよ。中盤以降は明白に手拍子展開だったのにイマイチ乗ってない名古屋のお客さんめ!昨季の「Sing Sing Sing」でもあったステップ中の「あっついわーもう」みたいな振付も健在で、女子の中で一番楽しかったなあ。もっと演技構成点出てもいいと思ったんだけど。

キーラ・コルピ「虹の彼方に」
美しい人が美しい衣装で美しい演技をするというのは本当に心洗われますね。わたし、正直ユーロ勢の中でキーラについては印象薄めだったのですが、今回ちょっとコルピ・フィーバーが心の中に来ています。ようやく「美人だけど選曲と衣装が奇抜で、よくすっぽ抜ける子」という自分の認識を改めるべき日が来たらしいので、とりあえず北の方に向かって謝罪。今までどうもすみませんでした。
いや、衣装とプログラムのどんぴしゃ具合以外にも、やっぱりフィンランド勢らしく端正な滑りをする人だなとか、2Tになった後に3T付ける男前っぷりは健在とか、そういう色んな発見がどしどし2分半の間に生まれるという素晴らしい演技でした。最後の虹をなぞるような可愛らしい振り付けと笑顔は、わたしがジャッジならかなり点数だすぜってくらい魅力的でした。思い出すだけで幸せになれる。はうん。

カロリーナ・コストナーガリシア・フラメンコ」
衣装レベルは相変わらずGOEがコンスタントにつく感じ。昨季はしんどそうなカロリーナばっかりを見ていて、前半なんて特に衣装もいまいちだったので、ミスしても下を向かずにきりっとしているカロリーナを見れただけでありがとう!って気持ちです。勿論、演技も良かった。手足が長くて形がぱしっと決まるから、独特の味わいがあってかっこいい。今日のカロリーナは半端なくいい女でした。まあ、何が起こるかわからない選手ですし、故障も抱えているという噂がありますから楽観は禁物ですが、これでFSを纏める事が出来たら、彼女はもう「大丈夫な人」だなあと思っていいのではないかと、今からちょっぴり期待しています。

浅田真央「タンゴ」
今までよりも格段に表情が豊かで、どういう風に音楽を表現しようか考えてきたことが伺える演技だったと思います。個人的には、タンゴならもうちょっと見得を切ったほうがいいかなと思いました。キャロラインのタンゴはばりっばりに見得を切っていたので、あれをちょっと盗んでみるくらいの感じで。序盤のミスのせいかステップがちょっと流れ気味になってしまったので、あそこに見せ場感やらダンス感が出てくると相当面白いんじゃないかと思います。演技後のインタビューの様子にも、一段上がった印象を受けました。去年のロシアでSPを失敗したときには「どうしよう…」という自問自答が聞こえてきそうだったけれど、今はちゃんと自分で簡単にゆかないことをわかっているようで。だからこそ、インタビュアーさんは点数と順位とジャンプのことじゃなく、彼女が自分の志したタンゴを演じられたかどうか、そこについてどんな評価を自分でしているかについて尋ねてほしかったなと思います。たぶん用意してたと思うよ、答え。


そんなこんなで波乱の展開…なのか…。点の出方については、GPSが終るくらいには傾向が見え始めているんじゃないかなと思います。ファンとしてもやきもきしますが、一番やきもきしちゃうのは選手自身だと思うので、あくまでみんなを暖かく見守っていこうねと思ったのでした。全体的にはプログラムがきっつきつじゃなくなった分、それぞれの選手やコーチ、振付師の創意工夫がみられて、色んな音楽が聴けてダンスが見られて、すごく楽しかったと思います。ではまた明日。現地の人もテレビの前のお友達も、みんなで楽しみましょう。

ローラーガールズ・ダイアリーを観たぜ!

目黒シネマにて鑑賞。わたしは大抵2本立て上映でも1本しか観ないという勿体ないヤツです。だって映画を2本ぶっつづけで観るには体力必要だし。今回も、昨日は遅くまで結婚式の二次会だったし朝はまあそれなりに宿酔だし、同時上映のTHIS IS ITは観たことあるし…ということで1本だけだよ。
さて本題。ローラーガールズ・ダイアリーは名作でした。かなり泣いた。映画館出てからも泣いてたので、すれ違った人はぎょっとしたであろう。思春期の女の子に対する、あるいはかつて思春期だった女に対する救いがそこかしこにちりばめられていて、それも一方的ではないという素晴らしい映画でした。
個人的に一番好きだったのは、家出から帰ってきたブリスがお母さんと会話するシーン。冷蔵庫にハートのマグネットがあって、それが母娘の間にちょうど来るという視覚的な意味でも可愛かったのですが、娘が言いたいことを伝え、母親がそれに応えるという会話がさりげなく、でも本当に丁寧に表現されていました。ああいう「本音を言い合う」シーンって感動的にやろうと思えばいくらでもできるんだけど、それじゃリアルじゃないじゃん。母親と対立したことのない娘ってたぶんいないと思うけど、その対立については「お母さんがもっとわたしの話を聞いてくれたら」と思うのと同時に「わたしがもっと伝えられたら」っていう後悔もあると思うのよ。どーんと喧嘩して、ばーんと殴り合って、わーって泣いて「ありがとう母よ!」というメロス的な展開じゃなくて、ちゃんと伝えあったからブリスとママはうまくいくんだよ、っていうことに救われた気分です。子どもの思いに親が絆される展開って嫌いじゃないんだけど、あくまでドラマとしてのキーになっちまうことが多いので(天使にラブソングをの2でのリタとママとか)、ママにはちゃんとママの思いがあるけど一番大事なのは娘の幸せで、娘はやりたいことがあるけど心のどこかでママの期待に応えて誇りに思って欲しい…っていう相思相愛故にすれ違う感じが丁寧に掬われていました。
母娘関係に限らず、全体的に大人が(すっごいメイクしてたり荒くれ者っぽい人でも)みんなちゃんとしていて、マギーはチームのキャプテンとしてはブリスの家出を助けるけど、自身も母親である身として「本当の家族とちゃんと話しあいなさい」と言ってくれるし、ライバル役のメイビンもすごくいい女だし。ブリスは正しい!と皆で持ち上げるんじゃなくて、駄目なところは駄目だと言い、それでも嫌いになったりはしない…というのが素敵。ローラーゲーム参加者じゃない人たちも、パッシュは「勉強を頑張って街から出ていく」という夢をちゃんと自力で掴んでいたり、アンバーはブリスが嫌っていたミスコンにちゃんと打ち込んで自分なりの成果を出すし、それも全部ひっくるめて評価されてたのが嬉しい。あとは彼氏のダメなところがこう…悪い男じゃないんだけど無神経というか鈍感というかボンクラなんだね!うん、若い男ってそうよね!的な感じだったのも好き。
わたしは痛いの嫌いなんでローラーゲームをやりたい!とは思わないけど、でも滑ってる人たちは本当にかっこよくて素敵でした。ミスコンとローラーゲームという正反対のものがいいモチーフになっていて、でもどちらも「ファイター」という言葉が似合い、「ファイター」であることでチームが、母と娘が、家族が、友人同士が、ひいては映画に出てくる人々ぜんたいが繋がっていて、かっこいいなあと思いました。親とか先生とか友達、あるいは自分自身などの「誰かの理想論」に窮屈さを感じたことのあるひとは絶対観て損はないと思います。目黒シネマでは22日まで。同時上映は「THIS IS IT」。


さて、目黒シネマには今度「告白」が来るのですが、同時上映が「下妻物語」の週と「嫌われ松子の一生」の週があります。どちらも大好きな映画なので今度は2本立てしたいのですが、中島監督2本立てって果てしなく脳みそが疲れそうだよ。真ん中取って「告白」だけになる可能性も高そうだぬー。

いよいよですね

すっかりブログをさぼっています。すみませんねー。kohalogicalです。演劇のほうも、2本ばかりレビュー書いてないのがあったり。もう今更なので簡単に触れておくとシャチキス「伝説との距離」とテレサ・ルドヴィコ演出「旅とあいつとお姫様」を9月に見てきました。シャチキスは「演劇なのに台詞だけで美味しそう」というのを成立させていて素晴らしい舞台で、何より少年社中の皆さんのうまくなりっぷりはここ1年くらい目覚ましいものがあると思います。しばらく、あまり面白くない時期が続いていたので何とも喜ばしい。ルドヴィコ演出の童話シリーズは独特の美意識とエロティシズムがあって流石でした。子どもが喜びそうな「秘密」感が溢れていて。KONTAさん(元バービーボーイズ)は小ネタで童謡を口ずさむだけでも、えもいわれぬ色っぽさがあって凄かった。
さて本題。テレビのみですがジャパンオープンを観ました。以下メモ。
【男子】
ジェフリー・バトルの王子様っぷりは綺麗な顔でもスタイルでもなくて、足首に宿っているのだと再確認しました。そりゃ現役バリバリの子らに比べれば…という部分はありますが、ふとした瞬間が美しくて、やはりこの人はプリンスなのだと再認識。
ブレジナはようやく「外向き」になってきた感じ。同じプログラムとは思えない感じで周りが見えている。
・小塚君は腕と背中がすごく良くなっていて驚いた。こちらも一皮むけたな。なんとなーく堅かった背中がとても語るようになっていて、足元が雄弁な人が背中でも語れるようになると強いぞと。
・アダムはおそらく全米チャンプになるんじゃないか…と随所で言われていたけれど、わたしもそんなことを思いました。いつの間にこんなにウェルバランスな選手になったんだろう。そして、あんだけいい演技だったのにちょっとドヤ顔しただけで「当然ですよ」みたいな反応だったことにうっかりときめいた。耳慣れたラフマニノフがすごく充実して聞こえて、彼は本当に旬なんだなと思った次第。
プルシェンコプルシェンコでした。興行成績NO.1の映画みたいな気分。内容とエンターテインメント性は保証されてまっせ、みたいな。
・高橋君なのにステップが盛り上がらなかったところにピアソラの難しさを感じました。でも、これがステップに至るまで気合が充実したら凄まじいと思うの。

ブレジナ・小塚・アダムあたりの「今が旬!」という感じが凄く良かった。3人とも、これからを「自分たちの時代」だと思ってるんじゃないかなっていう。特にアダムは、もう誰も彼を「気運に乗っただけ」とは言わないだろうなと思った。ジュニアチャンプになった頃のコーチの言っていた「全米チャンプの器」というのは全然間違いじゃなかったと証明された感じで(まあ、あのままそこにいて今みたいになれたかは定かでないけど、才能はちゃんと見抜いてたよねっていう)。逆に高橋君はもう円熟期で、これから闘うのは自分自身なんだぜ、という気迫を感じます。男子シングル、これからも面白そう。

【女子】
・セベ姐のかっこよさに「ユリア様あああ!」と叫んだとか、叫んでないとか。あのルッツが生で観れた人が羨ましい。成績は散々でしたが、楽しそうなユリアさんが観れて良かった。
・耳なじんだ曲をベテランがやっているのに新鮮、という境地を安藤美姫で見いだすと思っていなかったので、嬉しい驚きです。有香さんも言っていましたが「美しい」演技だった。できたてのプログラムなのでまだ試行錯誤中だと思うけど、音楽を愛していれば伝わるものってあるから、その方向で進んでほしいと思った。
・ファヌフの肌の色によく合う白だなあ…と思っていたら、ちょっとテニスのスコートっぽいんだなあとか考えてしまった。テニスコート似合いそうだよね、ファヌフ。彼女のプログラムも「ベテランが耳なじんだ曲をやっているのに新鮮」という感じで凄く良かったです。定番曲なのに個性的なパガニーニでした。
・素敵衣装とマニアックな選曲が健在のサラ・マイヤーなのですが、なにぶんN杯直前棄権のおもひでがあるだけに「元気で滑ってくれるだけで…」みたいに思っちゃうんだよね。全体的にはリリカルさがあって相変わらず素敵だったけど。早いとこ、彼女の演技をきちんと観れるようになりたい。
・色々と調整中っぽい真央嬢ですが、いい感じじゃないかなと思った。エキシも含めて、彼女に求められているのは「今までも似合いそうだと言われていたものを、新しい自分として表現する」っていう難しいことだと思うし、それに加えて技術も建て直していかなきゃいけない。でも、今のところその手綱をしっかりコーチが握っていそうで安心しました。身体もきちんと絞れていたし。やはり餅は餅屋なので、スケートベースで鍛えていくほうがいいと思います。
ジョアニーの安心感がショーにおけるシズカ・アラカワのようでした。この人でてくれば締まるよ!みたいな。バンクーバーで一番「女王様」っぽさを手にしたのはジョアニーのような気がする。重厚かつ華やかなサムデリで、この人本当に今季休むの!?みたいな。いいもの観ました。

男子も女子も、やっぱり五輪シーズンって大変だったんだよねえ…と思ったのは、たぶん「五輪枠争いをがんばらなきゃいけなかった人」がこのオフで凄い伸びていたからで。気持ちを落ち着けて自分と向き合えた成果が出ている、良い前哨戦だったんじゃないかと思います。仲のよさそうな各国キスクラもみものでしたし。あと、細かいルール変更のおかげでプログラムの「色々やんなきゃ怒られちゃう」感が薄れていて、落ち着いて見ることができました。ファヌフのスパイラルとか凄く良かったと思う。